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海外勢は“次”に注目。安倍首相「時間がない」政局で株価はこう動く=江守哲

いよいよ政局になりそうだ。安倍政権の「次」は誰で、これまでの政策は継続されるのか否か。日本株から離れた海外勢が再参入してくるかどうかはそこにかかっている。(『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』江守哲)

本記事は『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』2020年8月24日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

GDPは過去最大の落ち込み

日本の4-6月期の実質GDPは前期比でマイナス7.8%。年率換算ではマイナス27.8%と、現行の基準で比較可能な1980年以来、最大の悪化となった。内需の寄与度はマイナス4.8%、外需もマイナス3.0%だった。

第2次世界大戦以降で事実上最大の落ち込みとなった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、内需、外需ともに悪化。とりわけ外出や飲食店の営業自粛などで、GDPの過半を占める個人消費が大きく落ち込んだ。

7-9月期は反動増が見込まれるものの、感染のさらなる拡大も懸念され、力強い回復は望めそうにない状況にある。

西村経済再生相は「緊急事態宣言の下で経済を人為的に止めていた影響でこのように厳しい結果となった」と指摘。「輸出は欧米のロックダウンの影響で急減したが、今後は中国や欧米の経済回復が輸出をけん引していくことを期待したい」とした。

最大の悪化要因は民間消費支出。前期比マイナス8.2%と、3四半期連続で悪化した。消費税が引き上げられた昨年10-12月期のマイナス3.0%を大きく上回った。

政府による緊急事態宣言で消費全般が落ち込み、特に外出自粛で外食や旅行が大きく減退した。企業の設備投資も前期比1.5%減。輸出が大幅に減少した自動車産業の影響が大きく、機械投資や建設投資が企業収益の先行き不透明感から弱い動きとなった。住宅投資も感染症の影響で着工の延期が増えて減少した。

外需は輸出が前期比マイナス18.5%と大幅悪化。インバウンド消費もサービスの輸出として計算されるため、需要がほぼ消えた。輸入は同マイナス0.5%だった。一方、公共投資はプラスとなった。

「私には時間がないんだ」安倍首相の健康問題

もっとも、最近の安倍首相の健康問題への懸念もあるといえる。聞くところによると、かなり厳しいとの話もある。

ごく最近、安倍首相に休養を勧めたところ、「私には時間がないんだ」と一括されたとの話も聞こえてくる。時間がないというのは、おそらく自民党総裁の期限に関してではなく、自身についてであろう。相当体調が悪い可能性がある。

そうなると、日本株はアベノミクスの終焉となり、ますます海外勢は買わなくなる可能性がある。

しかし、日銀の政策が大きく転換し、ETF買いが止まると、逆に深い押し目が来て買いやすくなる可能性もある。つまり、健全な市場に戻るということである。

しかし、次の政権が同じ政策を継続する可能性もある。そうなると、日本株は「下がらないけど上がらない」株のままで推移し、投資妙味のない状況が続くことになる。

これでは日本株への期待感は盛り上がらないだろう。

海外勢はアベノミクス以降に買い込んだ株式をほぼすべて売り切っている。いつでも買い出動できるのだが、彼らの資金を誘引できるかどうかは、政策次第である。

Next: いよいよ政局へ。次の本命は「小池百合子」か



安倍政権の次

いよいよ政局になりそうである。マスコミも裏取りに動いているとの情報が入ってきた。今週中にも動きがあるとの話である。安倍政権の終焉の確度がかなり高くなりつつあるようだ。中国でも安倍首相の体調問題や後任人事の話がテレビなどで報じられているようである。相当の興味を持ってみられているといえる。

安倍首相の体調に関しては、様々な憶測があるようである。17日にはガンの検査も受けたとの話もある。また、膵臓ガンとのうわさも流れている。さらに鬱症が酷いとの見方もあるという。とにかく、何でもありの状況である。確証がない話ばかりだが、正常な状態ではないことだけは確かなようである。

ちなみに、安倍首相の父親の晋太郎氏が亡くなったのは67歳である。当時は膵臓ガンは告知しなかったようである。安倍首相は9月で66歳になる。徐々に近づいていることになる。

次の本命は「小池百合子」?

一方、菅官房長官は総裁になる気満々のようである。二階氏との会食で、いろいろ話が進んでいる可能性がある。麻生派、二階派、菅派で、緊急議員総会における総裁選挙の票固めは完璧との見方もある。

また、内閣を改造せずに総辞職し、麻生氏で繋いで総裁選するとの見方もある。その後、菅を首班指名し、「危機管理内閣」を打ち出すとのシナリオである。その場合には、解散は無い。

この「危機管理内閣」は都合が良い。なぜなら、これを全面に出せば、石破氏も動けない。動かないほうが得策となる。こうなると、いったんつなぎとしても、もう一度首相ができる麻生氏にとっても名誉なことである。しかし、残念ながら、菅氏は首相の器ではない。一時的に首相を務めたとしても、短命であろう。

やはり本命は「小池百合子氏」、現都知事である。

海外勢はすでに日本株を売り切った。再参入はあるか?

日経平均先物は2万3,000円を下回った水準での推移となっている。短期間で上げてきたスピード調整もそろそろ終わりであろう。いまの企業業績で株価の上昇はとても見込めないのだが、下にもいかないことを考えると、下げれば買いが入りやすいとの見方が下値を支えるだろう。日銀にも下げさせないという強い意志を感じる。最近は小幅な下げや続落になると買い支えている。

したがって、暴落になれば大量の資金で支えてくるだろう。それが、日銀自身が保有する株式の評価益の維持にもつながる。

このような構造が健全であるとはとてもいえないのだが、以前から解説しているように、日本はすでに「社会資本主義経済」に移行している。これだけ政府や当局が市場に直接的・間接的に介入している。自由市場ではなくなっていることはだれが見てもわかる。

もっとも、これを最も嫌うのが欧米の投資家である。これまではアベノミクスという政策の大転換に乗って買ってきたが、中身は官製相場であることがわかると、いまや一気に資金を引き出している。

このような背景もあり、海外勢はアベノミクス以降に買い込んだ株をすでに売り切ったとの試算もある。そうなれば、次は材料が出たときに買いで再参入することも想定されるが、問題は安倍政権の次である。

Next: 安倍政権の「次」も政策継続か? 海外勢の視線の先はそこにある



安倍政権の「次」も政策継続か?

前述のように、安倍首相の体調問題もあり、今年の秋口には衆院解散・総選挙になだれ込む可能性は非常に高い。コロナ禍でやりづらい面もあるが、それを理由に政治を停滞させるわけにはいかない。一方の野党も動き出している。準備が整う前に自民党は仕掛けてくるだろう。

そうなると、次期政権がこれまでの安倍政権および日銀の政策を維持するのかどうかが、投資家にとって最大のポイントになる。海外勢の関心はそこにしかないだろう。もっとも、安倍政権が米国の操り人形であることを考えれば、継続される可能性は高い。

ただし、日銀ETF購入やマイナス金利はFRBの評価が低い。いずれ日銀が止める可能性も少しは念頭に置いておくべきだろう。そうなれば非常にわかりやすくなる。株価は支えを失い、フェアバリューに下げるだけであろう。この点にはきわめて細心の注意が必要である。

一方、マザーズ指数の堅調さが際立っている。こういう指数を少しでもロングにしておくと、今回のような大相場で収益を追加的に上げることができる。いまのように、日経平均株価やTOPIXなどの主要株価指数がもたついている状況では、投資家の資金は新興企業の株式に向いやすいのだろう。値動きもよく、投資家のトレード妙味が高まっているのだろう。マザーズ指数がさらに高値を目指すのかに注目したい。

海外勢に無視される日本株

日経平均先物は引き続き2万3,000円を下回った水準での推移である。なかなか買い意欲が高まらないようである。米国株は堅調だが、ますます日米の株価の格差が開いている。経済構造の背景などを考慮すれば仕方がないだろう。日本人は日本株を当然のように投資対象の中核に置くだろうが、世界的な視野を持てばそれはあり得ないということになる。

日本株は世界の時価総額の1割以下である。中国よりも下である。少なくとも長期的な投資は米国を中心に据えるべきであることは言うまでもない。そのうえで、日本株は収益を上げるためのツールとして利用することを考えるとよいだろう。

つまり、トレーディングツールであり、長期投資の対象ではないという位置づけである。長期投資の対象から完全に外す必要はないが、中核にはなりえないことはすでに解説した通りである。

Next: ネガティブ面だけを見るのはNG? 日本株の投資戦略は



日本株の投資戦略

日本株の変動を利用して、いかに収益を上げるかを考えるのが良いだろう。短期トレンドを使ったトレードや、オプションも利用できる。特に日経平均先物オプションは利用価値がある。これだけ値幅が小さいと、オプション取引は非常にやりやすい。ボラティリティが高いときのほうが、オプション取引は難しい。とはいえ、ボラが高い時には短期間で収益化ができるメリットもある。

その時々の市場環境を上手く利用し、セオリーに則ってトレードすれば、安定的な収益を上げることは可能である。企業業績の悪化を気にすることもなく、株価指数の動きだけを見ておけばよいため、複雑な作業をしなくてもよいという大きなメリットがある。

それはともかく、日経平均株価は2万3,000円を維持するかと考えていたが、意外に弱いと感じる。もっとも、2万2,750円はかなり固いサポートになっている。あまり極端に下を見ないほうがよさそうである。下げれば日銀が支えることになる。したがって、あまりネガティブな面に目を向けないことも重要である。

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本記事は『江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』2020年8月24日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方は、バックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した米国市場金、原油各市場の詳細な分析もすぐ読めます。

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江守哲の「投資の哲人」〜ヘッジファンド投資戦略のすべて』(2020年8月24日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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