米財務省の情報機関から流出した「フィンセン文書」から世界各国の大手銀行がマネーロンダリングに加担していたことが明るみに出ており、東京オリンピック招致をめぐる賄賂の送金まで発覚。しかし、なぜか日本ではほとんど報じられていません。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2020年9月24日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
過去の「疑わしい取引」が明るみに
フィンセン文書とは、米国財務省の情報機関である「Financial Crimes Enforcement Network」通称FinCEN(フィンセン)に各国の金融機関から届けられた「疑わしい取引」に関する秘密報告やそれに関連する電子データのこと。これらが流出して米バズフィード・ニュースに提供され、国際調査報道ジャーナリスト連合の非営利報道機関が中心となって16か月余りにわたって分析されてきました。その内容が今月21日に開示され、金融市場にも大きな衝撃が走っています。
この文書は「疑わしい取引」を報告したものですから、これをもって直接的に過去の犯罪や過失を証明するようなものではありません。
しかし、JPモルガン、HSBC、スタンダードチャータード銀行、ドイツ銀行などが、相手がテロリストや不正な富を築く政治家、麻薬王だとわかっていながらポンジ・スキームの送金に手を貸していたことが明るみに出たことで、欧米の当該金融機関の株は大暴落。株式市場自体も大きな下落を余儀なくされています。
東京オリンピック招致をめぐる買収も?
本邦の金融機関も、57件ほどの疑わしいケースが開示されています。
さらに東京オリンピックを巡り招致委員会がコンサルタント契約を結んで日本円で2億円超を振り込んだとされるシンガポールの会社の口座から、IOCの委員だったラミン・ディアク氏の息子に3,700万円ほどが送金されていたことも詳らかになってしまい、とんだところで悪事が明らかになる事態に陥っています。
国際社会は反社会勢力のマネーロンダリングやポンジ・スキームの送金といった不正行為への金融機関の関与を厳しく監視する状況になっており、政治家がそれに関わるなどということは言語道断の問題といえます。
しかしながら、本件については本邦の株式市場はどこ吹く風で、メディアの報道も含めてほとんど騒ぎにはなっておらず、おめでたいにもほどがある状況が続いているのが現状です。
Next: 菅政権になってから緊急逮捕。桜の会に呼ばれたポンジ・スキームの親玉
安倍首相が「桜の会」に呼んだポンジ・スキームの親玉
もちろん、東京五輪の賄賂送金とみられる問題も、本邦の銀行が不正送金に加担していたという問題も重大で、詳細が詳らかにされることは極めて重要です。
しかしながら、本邦においては足元でそれよりもはるかに大きな事案ながら放置されているのが、日本を代表するポンジ・スキームのジャパンライフと政治家との関係の問題です。
数百万円の磁気ネックレスなどの預託商法を展開し、2017年に事実上破綻したジャパンライフの元会長以下幹部14名が、なぜか菅政権が誕生して48時間で一斉逮捕・送検された問題です。
そもそもなんで今ごろ逮捕なのか?という大きな疑問が残りますが、なによりこの元会長・山口隆祥なる人物と安倍晋三前首相や複数の政治家との関係が浮上していることで、2015年の「桜を見る会」では山口容疑者が招待され、ジャパンライフはその時に招待状や写真などを詐欺行為の宣伝材料として利用していたことが大きな問題となっています。
そもそもこの人物を誰が招待したのか。それが大きなポイントになるわけですが、安倍前首相は個人情報を盾にして国会での質問に対して回答を拒否しています。
政治的説明責任があるのは明白
ジャパンライフの詐欺事件についてはもちろん、司直の手によって詳細が解明されることになるのでしょう。
しかし政府が主催したイベントがポンジ・スキームのセールスツールとなり、それを信用した高齢者の顧客がすっかり騙されて詐欺被害の拡大に寄与することになったとなれば、刑事捜査とは別に、安倍前首相と政府にはしっかりとした詳細の説明責任が求められるのは当たり前の話。
しかし菅総理大臣はそそくさと来年の「桜を見る会」の中止を宣言しただけで、臭いものにいきなりフタだけして逃げ切ろうとしています。
全国44都道府県の高齢者ら延べ約1万人から計約2,100億円が預託商法で巻き上げられたわけですから、知らぬ存ぜぬではまったく済まされない状況です。
すでに安倍首相と山口容疑者の写真を見て信用して加入したという被害者の証言も飛び出しているのですから、まったく逃げ場はありません。
そもそも一国の首相がこうしたポンジ・スキームを支え、ある意味で遠まわしに詐欺行為を黙認して自らが宣材となったことなど、先進国をはじめ相当な発展途上国でもありえない話。
これが事実ならば、日本の証券市場に資金をいれて売買する海外投資家など皆無になりかねません。それぐらい事態は深刻なところにあります。
首相自体が善意の第三者で騙されたというのでしたら、ぜひ告訴して裁判で詳細を開示していただきたいものです。
Next: なぜ国内メディアは報じない?うやむやにすると国際的信用は失墜へ
なぜ国内メディアは報じない?
国内のメディアはこの件については深く安倍首相や菅政権を追求しようとする姿勢が見られないように見えますが、国際社会は非常に大きな関心を持っており、決してうやむやにはできない極めて重要かつ深刻な事案です。
ここでやり方を間違えれば、この国は一気に国際的な信用を喪失することになりかねません。
官房長官という安倍政権時代の問題を解決するある種のバックエンドの稼業から、いきなり表に登場した菅首相がどう説明責任を果たすのか。今後に注目が集まります。
メディアに恫喝をかけたり意に沿わない官僚は左遷させるなどということではまったく解決のつかない問題であり、国際社会の関心は極めて高くなっている状況です。
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『今市太郎の戦略的FX投資』(2020年9月24日号)より抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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