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今夜は米雇用統計、一時解雇はコロナ前の水準へ向かう?ドル円は全戻しに警戒を=ゆきママ

9月は荒れた相場となりましたが、10月もなかなか不安定なスタート。今日の雇用統計は非常に重要なイベントではありますが、相場の値動きを決定づけるイベントにはなりにくいと思います。その背景や現在の状況についても踏まえながら、今夜の展望について解説していきたいと思います。(FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

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コロナ支援法案の成立が目先の最重要ポイント

今回の雇用統計も非常に重要な意味を持つのは間違いないのですが、今はそれ以上に、コロナ支援法案・第4弾が注目されています。

給付金など多くの支援が7月末で打ち切られる中、早期の決着が期待されていましたが、中間層以下への大規模な支援を求める野党・民主党に対し、与党・共和党は限定的な支援に留めることを提案。その後、交渉が難航・長期化したことで、株価にも悪影響が出ていました。

NYダウ 日足(SBI証券提供)

しかしながら、先週末あたりから、民主党のペロシ下院議長とムニューチン財務長官が協議の進展や合意に向けた歩み寄りをアピールしたことで、マーケットは成立を織り込んで上昇しています。

したがって、仮にもし今夜の雇用統計の数字が良かったとしても、この支援法案が決まらないとなれば、マーケットは嫌気することでしょう。

雇用統計の堅調さ、最近の経済指標の好調さというのは、これら経済対策のドーピングをフルに受けての数字だからです。

もちろん、発表直後は数字に引っ張られて相場は動くでしょうが、最終的には過去のデータという見方で値動きが継続しない可能性が高いですから、このコロナ支援法案の行方についてもチェックしておきたいところでしょう。

Next: 先行指標は良好、中小企業の改善が目立つ。今夜もサプライズはあるか?



労働市場の数字を包括的に分析することが必要か

雇用統計に関しては、最も注目されるのがヘッドラインの数字、特に非農業部門雇用者数ですが、前回は一時解雇者数(レイオフ人員)などもクローズアップされ、それが相場の値動きにも強く関係していたので、今回も数字全体を見るというか、包括的に分析する必要があるかもしれません。

まず、前回(8月分)の非農業部門雇用者数は+137万人増、平均時給も前月比+0.4%・前年比+4.7%と申し分のない数字でした。

そして、これ以上に注目されたのが、再雇用前提の一時解雇者数(レイオフ)の急減です。一時期は1,806万人という、とてつもない数字を記録したものの、前回の8月分では616万人まで減少しました。特に前々回の7月分から300万人以上の減少・急回復となっています。

一時解雇者数の推移

仮に9月、10月、11月と同様のペースでレイオフ人員が減少すれば、この一時解雇者数はほぼコロナ前の水準に戻ってしまいます。FRBの2大目標は物価の安定と雇用の最大化ですから、そのうち片方は比較的早期に達成されることになるわけです。これにより、緩和政策が本当に続くのか、という疑義が生じて株価が反落したという指摘があります。

前回は平均時給が予想を大きく上回る伸びとなり、失業率も急低下したことから発表直後こそドル円が30〜40銭程度上昇したものの、結局は行って来いで終値は雇用統計発表前の水準と同じでしたから、今回も全戻しには警戒しておきましょう。

先行指標は良好、中小企業の改善が目立つ

先行指標は全体的に堅調な数字が並び、雇用統計の回復傾向を裏付ける数字となっています。

先行指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)

とりわけ、民間のADP(オートマチック・データ・プロセッシング)社の雇用報告は前回8月から大きく改善しています。

もっとも、この数字は中小企業の雇用が増えたことに起因するらしく、賃金面ではマイナスといった見方も出ています。

とりあえず、先行指標は良好なので、予想並かそれ以上の数字を想定してトレードする方が良いかもしれません。

Next: 今夜は全戻しもありそう。想定レートは1ドル=105.20〜106.00円



想定レートは1ドル=105.20〜106.00円

非農業部門雇用者数が予想を大きく上回る数字であれば、円売りに加えて、ややドルの買い戻しもあるでしょうが、最近はドル買いが出るのはもっぱらリスクオフ時で、どちらかというと株価が下がった時に発生するドル需要で買われているような状況です。

よほど米経済の堅調さを意識させるような全体的にピカピカな数字になるならともかくとして、普通に考えれば、どこかしらにはケチがつくもので、なかなか為替の方向性を決めるようなイベントにはならないでしょう。先ほども書いたように今の労働市場はコロナで歪んでおり、包括的にデータを見ることが求められています。

そして、FRBが長期的なゼロ金利政策、緩和姿勢を明確に打ち出していることによって、大きな流れとしてはドル安というのがありますから、仮に上がれば一旦は売りという判断の方が良さそうです。

ドル円(日足)チャート

コロナ支援法案の成立という別なテーマがある中で、9月終盤から続いている105.50円前後の引力から逃れられる感じはないんですよね。

非農業部門雇用者数が100万人を大幅に上回るようなサプライズがあれば別かもしれませんが、まずまずな数字、予想を上回ったところで106円台に乗せれば御の字で、コロナ支援法案が不成立なら、米経済の回復期待というのは打ち砕かれることでしょう。

したがって、トレードとしては戻り売りで、雇用統計が予想並か良好な数字でドル円が反発するなら、105.80~106.00円レベルでは一旦売って、20~30銭程度の値幅を狙ってみるのが良さそうです。損切りは浅めに106.20円あたりに置いておきましょう。

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image by:VH-studio / Shutterstock.com

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2020年10月2日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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