マネーボイス メニュー

なぜ無印良品株を3月の投げ売りで買えたか?バリュー投資家の目線=栫井駿介

推奨した良品計画で45%の含み益が出ています。なぜ私は下落の中で買い続けられたのか?足元を見るとふらついて落ちる自動二輪車の試験「一本橋」は、目線を遠くにやるのがコツです。株式投資も「数年先の未来」を見ないと成功しません。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

【関連】居酒屋の倒産ラッシュ開始。「忘年会消滅」でも生き残るのは◯◯な店だけ=栫井駿介

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

バイク免許の難関「一本橋」と長期投資の関係

バイクの免許試験に「一本橋」というものがあります。幅30cm、長さ15mの平均台をバイクに乗ってゆっくり渡り切るものです。

私も昨年教習所に通いましたが、この一本橋にとても苦戦しました。どうしてもふらついて落ちてしまうのです。落ちたら即失格なのに、試験本番までの練習で1~2回しか成功しない有様でした。

そこで教官からいただいたアドバイスが以下のようなものでした。

「栫井くん、足元を見ていないかい?目線は遠くを見るんだよ。そうすればうまくいくから」

ハンドルさばきが問題だと思っていたので、目線の話をされて半信半疑でした。しかし「溺れるものは藁をも掴む」状態だったので、どうにでもなれと教官の言うことを信じて本番に臨みました。

すると、驚くほどふらつかずに、余裕で橋を渡り切ることができました。見事に一発合格です。アドバイスをいただいた教官には感謝するばかりです。

良品計画の「数年後の未来」を見続けた結果

なぜこのような話をしたかと言えば、これがそのまま投資にも当てはまると思ったからです。

私たちが行っているのは長期投資です。したがって、見るべきは足元の株価の動きではなく、企業の数年後の姿なのです。数年後を思い浮かべれば、目の前で起こることに心を惑わされずに望んだ結果が得られると考えます。

それを実践したのが、主力の推奨銘柄である良品計画のケースです。

推奨をはじめたのが約1年半前、株価がピークの4,000円から2,000円まで下がってきたときでした。売上が伸びている一方で利益が下落し、「成長の陰り」が噂されていたのです。

しかし、開示資料を読み込むと、減益要因はシステムや物流、人材への投資であり、商品そのものはとてもよく売れていることがわかりました。何より私自身が無印良品のヘビーユーザーですから、店がいつも賑わっていることは肌感覚で知っていました。

そこで買い始めて、2019年末にかけて一旦は上昇しました。しかし、安堵するのも束の間、中国で新型コロナウイルスが発生し、同国が売上高の約3割を占める同社の株価は大きく下がり出しました。そこからウイルスは世界規模に拡大し、株価は反発するまもなく1,000円を割り込むところまで下がりました。

多くの投資家はここで狼狽売りをしてしまったでしょう。しかし、当時から会員の方ならおわかりのように、私はここでさらに買い増しました。

良品計画<7453> 週足(SBI証券提供)

それができたのは、まさに「数年先の未来」を見ていたからです。

Next: 数年先の未来は? 橋から落ちなければ「合格」にたどり着ける



「数年先の未来」を見た結果

以下が当時会員に宛てたメールの抜粋です。

会員の皆さま

以下の銘柄が約定しました。
良品計画(7453)100株 1,330円
指値より大幅に低い価格での約定です。投げ売り状態と言って良いと思います。
バリュー株投資家にとって、このような時ほど買いどきです。回復に時間がかかったとしても、ここでたくさん買えれば、将来の資産が大きく増える可能性が増します。
見るべきは目先の状況ではなく、数年先の未来です。

2020年3月9日 つばめ投資顧問会員宛メール

「数年先の未来」とは、コロナが収束し、これまでの成長路線に回帰したときの未来です。減益要因となった投資が効果を顕し、中国を含めた店舗が増えれば業績が向上している確率はとても高いと判断しました。

もっとも、その未来を確認すべく、店舗へも足を運びました。すると、客は減るどころかむしろ増えていて、特に学校が休校になっていたことから棚がスカスカになるほどお菓子が売れていたのです。

そこで私は「これは食品が来る」と確信し、その後さらに買い増しを進めました。以下は株価が大底をつけた3月19日に会員に宛てたメールです。

以下の銘柄が約定しました。
良品計画(7453)200株 1,000円
まさかこの値段で買えてしまいました。これで買いはじめから目標としていた10分割前の単元(1,000株)に到達です。
今まさにイオンモール内の無印良品に来ていますが、平日にしては人が多い印象です。新型コロナの影響により自宅で過ごす機会が多くなると、「体にフィットするソファ」やレトルトカレーを重宝します。棚を見ると、子供向けなのかお菓子が売れている印象を受けました。
目先芳しくなくても、まだまだ長期的な成長が期待される財務良好銘柄です。正直、時価総額3,000億円はありえない数字だと思います(ニトリ1.5兆円、しまむら3,000億円)。あとはじっくり上がるのを期待したいと思います。

2020年3月19日 つばめ投資顧問会員宛メール

橋から落ちなければ「合格」にたどり着ける

この買いが功を奏し、良品計画の株価は大底の2倍以上に上昇しました。ここで買えた多くの会員が資産を増やせたのです。

良品計画<7453> 日足(SBI証券提供)

足元の株価だけを見ていたらこの成果を得ることはできなかったでしょう。3月の株価はまさに「投げ売り」状態でした。筆頭株主だった機関投資家も売りに回り、目先を見れば下がることが明白だったからです。

それでも、遠くを見続けたからこそ、私は買うことができました。まさに一本橋さながらです。

一本橋で遠くを見るべき理由は、身体の重心をブラさないためだそうです。近くが気になるとどうしても細かなズレを修正しようと余計に動いてしまいます。それでズレがさらに拡大してついには橋から落ちてしまうのです。

一方、遠くを見ていると、まったくズレていないということはないのでしょうが、そんなことは気にならないので落ちるほどには至らないということです。重心さえ傾かなければ、30cmの幅からは容易に落ちることはありません。

長期投資でも同じです。企業の数年後の未来さえ見続けていれば、足元の株価変動や細かな材料に左右されることはありません。そこで下手に動くと、得られるはずだった利益も得られなくなってしまいます。

細かくトレードして最高の動きができれば良いですが、実際はそんなにうまくいきません。それならせめて30cmの橋から落ちないように気をつければ、誰でも「合格」にたどり着けるのです。

さて、すでに買値から45%の利益をあげている良品計画ですが、これからどうすべきか、会員の方ならよくわかっていると思います。見るべきは足元ではなく、数年先の未来です。

【関連】コロナ後の「世界最強市場」マザーズ指数14年ぶり高値はバブルなのか?=栫井駿介

【関連】なぜバフェットは日本の商社株を買った? 素人が真似ても儲からぬ理由=栫井駿介


つばめ投資顧問は、本格的に長期投資に取り組みたいあなたに役立つ情報を発信しています。まずは無料メールマガジンにご登録ください。またYouTubeでも企業分析ほか有益な情報を配信中です。ご興味をお持ちの方はぜひチャンネル登録して動画をご視聴ください。

※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

【関連】ZOZO復活の兆し?アパレル各社の「ZOZOがえり」は前澤氏不在のつまらなさを埋めるか=栫井駿介

【関連】JR4社はいま買い時なのか? 年初来安値更新「割安」評価の裏に潜むリスク=栫井駿介

【関連】三井住友、純利益で三菱UFJを抜くも共倒れの危機?バフェットも見限る銀行業の暗い未来=栫井駿介

image by: saruntorn chotchitima / Shutterstock.com

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2020年10月26日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問

[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。