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早くも「菅後」を見始めた永田町、支持率急落で浮上する石破待望論=斎藤満

菅政権に内閣支持率急落のショックが尾を引いています。コロナ対応だけでも評価を大きく下げたのですが、菅政権への逆風が不自然なほど集中して出てきました。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2020年12月21日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

尾を引く支持率急落ショック

菅政権に内閣支持率急落のショックが尾を引いています。

今月12日の毎日新聞社の世論調査が支持率40%、不支持率49%となって、先月までと世界がガラッと変わってしまいました。NHKの調査でも支持率は42%と、前月から14ポイント低下し、不支持率は19ポイントも上昇しました。コロナ対応への批判が堪えました。

その狼狽ぶりは、直後にあれだけ継続にこだわった「GoTo」キャンペーンの全国一律停止決断に表れています。

厚労省も国交省もまったく準備ができていない中での突然の政策変更に狼狽し、ひたすら事後対応に追われました。確かに、世論はこれだけ感染が全国に拡大していながら、「GoTo」を続ける政府に批判的でした。世論調査にも表れています。

しかし、この一時停止には国民の理解は得られたものの、年末年始の書き入れ時にその影響を直接受けるホテルなど業界の従業員には営業を続けられるのか、解雇されるのではないかとの不安を高めることになりました。

補正予算では時短などに協力する企業への補償は上乗せされましたが、職を失うものへの配慮はなされていません。

この決断にも「場当たり的」「ドタバタ決断」と批判が聞かれます。

逆風が一気に集中

このコロナ対応だけでも評価を大きく下げたのですが、菅政権への逆風が不自然なほど集中して出てきました。

まず政権周辺に波風が強まっています。鶏卵生産大手のアキタフーズから、複数の自民党農水相経験者に現金が提供された疑惑で、東京地検特捜部が動きました。

東京地検特捜部はまた安倍前総理本人に、「桜を見る会」前夜祭問題で事情聴取を行う可能性があり、本人は国会招致を受け入れる意向と言います。

この件が発覚して以来、安倍氏は「自身も事務所もまったく資金補填はしていない」と否定し続け、菅官房長官もこれに沿った答弁をしてきました。ところが、ホテルから後援会あてに領収書が切られたことがわかり、公設第一秘書も、資金補填を認めました。

Next: 菅総理自身の問題も。気になるのは米国の動き



菅総理自身の問題も

菅官房長官時代に関わった政権内の問題のみならず、菅総理自身の問題も噴出しています。

コロナ対応の一連の問題は人の命に係わる医療ひっ迫を知りながら観光関連中心の経済優先姿勢が問われたほか、国民に感染防止を呼び掛けながら、自身が大人数での忘年会に参加し、さらに「はしご会食」を続けることに、危機感の欠如、無責任さが問われています。

さらにさかのぼると、安倍前総理の「桜」に相当する菅官房長官を主役とする「春の集い」に約2,500人を招き、その資金面での補填をしていながら政治資金収支報告書に記載していなかったことが報じられました。

これは安倍総理の前夜祭と同じ、政治資金規正法違反が問われます。

米国の監視

これだけ一気に問題が噴出するのは、さすがに不自然さも感じます。

気になるのが米国の動きです。そもそも安倍前総理の退陣は、表向き持病の悪化ということになっていますが、当時もステーキハウスで食事をしたり、退陣後もゴルフや会食で元気に活動していて不可思議です。

前回の第一次政権を投げ出した時も持病悪化が原因と言いますが、政治の行き詰まり、米国との関係が指摘されました。

今回、安倍総理と懇意にしていたトランプ大統領が選挙で敗北しました。共通の力がトランプ、安倍両氏を引きずり下ろした可能性も考えられます。

その点で気になるのが、5か月前にワシントンに拠点を置くシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書です。

米国の安全保障政策に深く関わるところですが、これが「日本における中国の影響力」と題する報告書を国務省の協力のもとにまとめました。ここでは安倍政権を中国びいきに導いた張本人として、二階幹事長、今井総理補佐官兼秘書官が名指しで批判されました。

現在の米国では、与野党を問わず、安全保障面で中国の脅威を強く感じていて、通信情報、宇宙開発などを中心に中国排除を進めています。米国に上場する中国企業に圧力をかけ、中国人への査証(ビザ)発給も取り消されているほどです。

米国は日本から重要な軍事機密が中国に漏洩するリスクを意識し、警戒しています。それだけに、日本政府内の親中国派を警戒しています。

二階幹事長の後押しと安倍総理の推しで総理の座に就いた菅氏へは、米国の監視の目が光っています。米国の呪縛によって、日本は国産ジェットを開発しても飛ばすことができず、有効な抗ウイルス薬があっても、これを承認できずにいます。

今後、対中国政策などで米国の「虎の尾を踏む」ようなことになれば、いろいろな形で政権は揺さぶられる懸念があります。例えば、来年のオリンピックに米国が選手団を派遣しないと言えば、オリンピックの開催も難しくなり、政権へのダメージも甚大となります。

Next: 永田町に石破待望論も



永田町に石破待望論も

菅総理は来年秋までに衆議院の解散総選挙をしなければなりません。

しかし、連日コロナ感染者が増加を続け、年末年始の大事な時に国民の行動を縛る結果となり、支持率急落のなかでは、とても解散どころではありません。

自民党としても菅総理をトップとして選挙をすることに不安を感じ、公明党も自民党との溝が深まっていて、選挙協力にも困難をきたします。

永田町には菅短命政権との見方があり、後継総理候補として、石破元幹事長の名が挙がっています。石破氏はすでに派閥の長を辞していますが、それでも永田町には「石破さんしかいない」との声が強まっています。

トランプ大統領の元では難しくとも、バイデン政権となり、米国のCFR(外交問題評議会)が力を持てば、石破総理の実現性が高まります。

来年は菅続投ではなく、早い時期にトップの交代があるのではないかと思います。

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  • 永田町は「菅後」を見始めた(12/21)
  • 菅政権は円高を止められない(12/18)
  • バイデン政権の親中派は過去の話(12/16)
  • 脱炭素社会、日本の視点(12/14)
  • 輸入低迷に見る日本経済の脆さ(12/11)
  • 医療崩壊は政権崩壊のトリガーにも(12/9)
  • 科学力の軽視は命取り(12/7)
  • スガノミクスの前にやるべきこと(12/4)
  • ドル安の正体は(12/2)

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2020年11月配信分
  • トランプ台風は去ったのか(11/30)
  • 菅政権の外交に「背骨」が見えない(11/27)
  • コロナ禍で求められる政策対応(11/25)
  • 政府に求められる具体的な感染予防策(11/20)
  • コロナの株バブルにまだ拡大余地(11/18)
  • トランプの法廷闘争戦略に逆風(11/16)
  • 菅政権成長戦略は危険と隣り合わせ(11/13)
  • バイデン勝利が菅政権に示唆するもの(11/11)
  • 感染防止は国民任せでよいのか(11/9)
  • トランプの勝利宣言が新たな混乱の種に(11/6)
  • 長期金利が示すコロナ対応策の差(11/4)
  • 追い詰められた日銀に姿勢変化の兆し(11/2)

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2020年10月配信分
  • バイデノミクスも悪くない(10/30)
  • 4年前とは異なる大統領選の決着と市場の反応(10/28)
  • 個人の景況感悪化にどう応えるか(10/26)
  • ゼロ金利長期化は無限のバブル醸成(10/23)
  • アフターコロナの見極めが難しい(10/21)
  • 中国の「内憂外患」(10/19)
  • 大統領選挙が米国を分断(10/16)
  • 菅政権の限界(10/14)
  • トランプが実証したマスクの効果(10/12)
  • エネルギー革命が静かに進行(10/9)
  • コロナ禍からの回復、3つの特色(10/7)
  • 鬼の居ぬ間の地政学リスク(10/5)
  • 新型コロナで事実上のMMT(10/2)

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2020年9月配信分
  • 法廷闘争を目論むトランプ陣営(9/30)
  • 密かにドル安策をとり始めたトランプ政権(9/28)
  • 米の中東和平がかえって緊張高める(9/25)
  • 日銀の物価安定目標は景気の足かせ(9/23)
  • 勢いを失ったトランプの選挙戦(9/18)
  • 広がるW字型景気リスク(9/16)
  • アベノミクス継承政権買いの限界(9/14)
  • 7月の家計消費息切れは何を意味するのか(9/11)
  • 世界貿易は6月底入れだが(9/9)
  • 法人企業統計にみるコロナの明暗(9/7)
  • 中国習近平政権に異変か(9/4)
  • 「アベノミクス」は何だったのか(9/2)

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2020年7月配信分
  • 失った時間は永久に取り戻せない(7/31)
  • ワクチン開発の政治化リスク(7/29)
  • フラット化の中でドル高が修正(7/27)
  • 「骨太」の内需拡大策は付け焼刃(7/22)
  • 米国のW字型回復を懸念するFRB(7/20)
  • 劣勢のトランプ大統領に「ウルトラC」はあるか(7/17)
  • ウィズコロナで注目される健康ビジネス(7/15)
  • コロナ対策で使った11兆ドルの後始末(7/13)
  • 回復の力をそぐ2メートルの壁(7/10)
  • 試される人間の知恵(7/8)
  • 計算違いした香港中国化の代償(7/6)
  • 政治リスクが高まる日米株式市場(7/3)
  • 規制と自由、コロナ共生下の経済成果は(7/1)

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2020年6月配信分
  • 世界貿易にもコロナ・ショック(6/29)
  • 転倒した憲法改正解散(6/26)
  • 市場の期待と当局の不安がぶつかる米国経済(6/24)
  • 狂った朝鮮半島統一シナリオ(6/22)
  • 見えてきたコロナ危機の深刻度(6/19)
  • 崖っぷちの習近平政権(6/17)
  • FRBが作ったドル安株高の流れに待った(6/15)
  • 長期金利上昇を意識し始めた主要中銀(6/12)
  • コロナで狂った中国の覇権拡大(6/10)
  • トランプ「拡大G7」の狙いは(6/8)
  • 準備不足の経済再開で大きな代償も(6/5)
  • コロナより政権に負担となった黒人差別(6/3)
  • 自動車依存経済に警鐘を鳴らしたコロナ(6/1)

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2020年5月配信分
  • 非効率のビジネスモデル(5/29)
  • 再燃した香港での米中戦争リスク(5/27)
  • 日本は反グローバル化への対応に遅れ(5/25)
  • 日銀の量的質的緩和は行き詰まった(5/22)
  • トランプ再選に暗雲(5/20)
  • トランプ大統領、ドル高容認発言の真意は(5/18)
  • 堤防は弱いところから決壊する(5/15)
  • コロナの変革エネルギーは甚大(5/13)
  • 株の2番底リスクは米中緊張からか(5/11)
  • 「緊急事態宣言」延長で経済、市場は?(5/8)
  • 敵を知り己を知らば百戦危うからず(5/1)

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2020年4月配信分
  • コロナ対応にも米国の指示(4/27)
  • 原油価格急落が示唆する経済危機のマグニチュード(4/24)
  • ソーシャルディスタンシングがカギ(4/22)
  • ステージ3に入る株式市場(4/20)
  • 「収益」「効率」から「安心」「信頼」へ(4/17)
  • コロナショックは時間との闘い(4/15)
  • 株価の指標性が変わった(4/13)
  • 108兆円経済対策に過大な期待は禁物(4/10)
  • コロナ恐慌からのV字回復が期待しにくい3つの理由(4/8)
  • コロナを巡る米中の思惑と現実は(4/6)
  • 働き方改革が裏目に?(4/3)
  • 緊急経済対策は、危機版と平時版を分ける必要(4/1)

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2020年3月配信分
  • コロナ大恐慌(3/30)
  • 大失業、倒産への備えが急務(3/27)
  • 新型コロナウイルスと世界大戦(3/25)
  • 市場が無視する大盤振る舞い政策(3/23)
  • 金融政策行き詰まりの危険な帰結(3/18)
  • 政府の面子優先で景気後退確定的(3/13)
  • 市場に手足を縛られたFRB(3/11)
  • コロナの影響、カギを握る米国が動き始めた(3/9)
  • トランプ再選の真の敵はコロナウイルスか(3/6)
  • 2月以降の指標パニックに備える(3/4)
  • 判断を誤った新型コロナウイルス対策(3/2)

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2020年2月配信分
  • 世界貿易は異例の2年連続マイナス懸念(2/28)
  • 政府対応の失敗で「安全通貨」の地位を失った円(2/26)
  • 信用を失った政府の「月例経済報告」(2/21)
  • 上昇続く金価格が示唆する世界の不安(2/19)
  • IMFに指導を受けた日銀(2/17)
  • 中国のGDP1ポイント下落のインパクト(2/14)
  • 習近平主席の危険な賭け(2/12)
  • 政府の「働き方改革」に落とし穴(2/10)
  • コロナウイルスは時限爆弾(2/7)
  • 鵜呑みにできない政府統計(2/5)
  • FRBにレポオペ解除不能危機(2/3)

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マンさんの経済あらかると』(2020年12月21日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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