オランダの「寿司食べ放題」で嫌がらせ?巨大握りを出す意味とは

 

先日行ったティルブルフの某店で、食べ放題10回目にして、初めてややこしい目に遭いました。食べ放題のシステムは分かっているつもりだったので、このお店に入ったときも、特に店員さんにルールを説明してもらうことなくスタートしました。……が、前のラウンドの注文品が全部出てくるまで、次のラウンドの注文をしてはいけない、というルールをすっかり忘れていたのです。

1ラウンド目の注文をすると、店員さんがオーダーを通して、注文カードを返してくれます。頼んだものがいくつか出てきたので、それを食べてから2ラウンド目の注文を記入しました。1ラウンド目の注文品がまだ全部来ていないうちに、注文カードがまたピックアップされます。1ラウンド目の残りの品はすぐに出てきたので、その時点ではまだ順調でした。

2ラウンド目でも同様に、半分くらい出てきたところで3ラウンド目を注文し、3ラウンド目の品が出はじめたところでまた4ラウンド目を注文します。ぼさっと何も考えずに、出されるものを順番に食べていただけだったので、「あれ?」と思ったのは、4ラウンド目の注文を通してもらって、カードが返ってきたときでした。

3ラウンド目に頼んだ品が半分くらい出た辺りでしたが、2ラウンド目の品がまだ全部来ていないことに気づいたのです。(もっと早く気づけよ!!)と自分にツッコミを入れながら、4ラウンド目の注文が全部腹に収まるだろうか、と内心かなり焦りました。

言うまでもなく、ルールを忘れて注文しすぎた我々がすべて悪いのですが、お店の人が誰も我々の間違いに気づいていなかったのが不思議でした。でも店内を見渡せば、その理由はすぐに分かります。3人のホールスタッフが、1人は注文カード係、1人は料理のお運び係、1人はドリンクのお運び係に割り当てられていて、完全に流れ作業です。各テーブルの進捗状況把握している人誰もいません

厨房も、各テーブルのオーダーをラウンドごとに管理するのでなく、入った注文を手当たり次第に調理して、出来たものからどんどん流しているだけのようです。チェック機能がなく、お客がルールを守るのを前提にしている緩さは、良くも悪くもオランダ的ですが、トラブるとかなり混乱します。

錯綜している注文状況を確認しようと、連れがカウンターに出向きましたが、なかなか戻ってきません。注文の通し漏れがあったのか、どの品がまだ出ていないのか、すぐに分かる人が一人もいなかったのです。すったもんだの末ようやく確認が取れて、2ラウンド目と3ラウンド目の残りの品は全て出してもらい、4ラウンド目を全部キャンセルすることで交渉成立となりました。しかし、連れが戻ってくるのを待っている間に、行き違いで4ラウンド目に注文したキュウリの浅漬けがやって来たのです。しかも、不自然なほどに山盛り…。前のラウンドがまだ終わっていない状況でこれを食べたら、完全に土俵を割ってしまいます。

よもや4ラウンド目をキャンセルできるとは夢にも思っていませんから、これはもうどこかに捨てに行くしかない、と覚悟を決めました。頬っぺたが膨らまないように注意しながら、キュウリをめいっぱい口に詰め込み、平静を装って女子トイレへ。乱切りのキュウリたちがぷかぷかと白い便器に浮かぶ光景は、ちょっとシュールでしたが、やがて渦を巻いて姿を消しました。残りのキュウリは連れが平らげてくれたので、トイレ2往復の刑は免れましたが、食べ放題の奈落に落ちたような気分で、すっかり情けなくなりました。

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