手に負えない絶不調
その年の11月頃、症状がますます悪化するようになった。会社のデスクにいるだけで時々吐き気が襲ってくる。慢性的な頭痛。そして胃腸がむかむかする。そのように、体調不良の状態が続いたので、ついに私は会社を休みがちになってしまった。そのときは誰にも相談できず、全ての問題を一人で抱え込んでしまったのだ。
その時、「私はひょっとしたら『鬱病』なのではないか?」と思うようになった。
時間があれば本屋に行き、鬱に関する本を手に取って読んでみた。しかし、どの本も結局伝えていることは共通している。
「うつ病は脳内シナプスの欠如から生じる病気なので、とにかく病院へ行くこと。」
「うつ病は几帳面、真面目で責任感が強い人がかかりやすい。」
「うつ病は優秀な人がかかりやすい」
という言葉すらあったが、私を慰める言葉としては全く機能しなかった。
逆に、そんな言葉しかないことにショックを受け、ただただ無力感が襲うばかりであった。
仕事はまだ落ち着きを見せない。いや、落ち着きどころか忙しさが益々激化していく。
ある日、別のプロジェクトでの会議が終わった後、そのプロジェクトに関わっているコンサルタントの方にこう言われた。
「君、ちゃんと眠れてる?顔色がとても悪いよ。」
私はすかさず、こう切り返した。
「大丈夫です。あまり寝ていませんが、あはは。」
と空返事すると、
「ちょっと病院に行った方がいいかもしれないよ。精神科に。」
精神科?
その時になって初めて、自分が客観的にどう思われているのかが分かった気がした。メンタルを病んでいるように見えているのだ。それはそうだろう。過度の睡眠不足と蓄積していくばかりの仕事。それらを解消する術はまだ自分の力では見つからず、全く覇気を失ってしまったのだ。
弱っているときにやってくるモノとは?
そんなある日。私はひっそりと一人でランチを食べていると、生命保険のセールスのおばちゃんがやってきた。保険の勧誘である。
私は完全に人と話すことを拒絶していたため、相手にもしていなかったのであるが、何故かそのおばちゃんは、何度も私に話し続けてくる。完全なる負のオーラをまとっている私は絶好のカモかもしれない。
ところが、私は誰かに自分の状況を聞いて欲しくて、今の自分の境遇を口に出していた。すると、そのおばちゃんは一つのパンフレットを取り出し、私のデスクにそっと置いた。
「やっぱり保険の勧誘かよ!」
と心の中でなじりながら、そのパンフレットを見てみると、保険関係のものではない。
「え?」
私は動揺した。そのパンフレットには、「ヒーリングセミナー」という文字が浮かんでいた。瞬間的に「あ、やばい!」と思った。スピリチュアルや新興宗教系、ネットワーク系の勧誘だととっさに思った。
――――――しかし。
結果的に私はそのセミナーに参加した。それ相応のお金を支払って。そして、私はここからドップリとこのセミナー集団に依存するようになってしまった。勿論、それ相応のお金を支払って……。
そのセミナーに初めて参加したのは、2001年12月1日。そして、2001年12月18日に私は「約3週間の療養が必要」という診断書を医師からもらい、翌19日から人生初めての休職を味わうことになった。今思えば、そのセミナーはすさまじい影響力を私に与えた。それほど素晴らしいセミナーだったのかどうか、私は未だに答えられない。
しかし、これだけは言える。
初めての休職は……単なる「時間稼ぎ」にすぎなかったのである。
「初めての休職~なかなか復職できない現実」
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