休職4回、退職4回。うつ歴12年のサラリーマンが綴った心の病歴

2015.04.10
by まぐまぐ編集部
 

ヒーリングセミナーにはまる私

私のもとに届いたパンフレットを何気なく読んでみた。

「2002年、リレーションシップにとって、多くを学び、癒し、前進する時です。リレーションにとっての『幸せ』は私たちの共通の目的であり私たちがこの世界に与えることのできる、最大の贈り物であります。
人間関係は、私たちの中のまだ癒されていない部分、誤解されている部分、幸せをブロックしている部分を常に見せてくれます。
そこに気付きと癒しを与えることは、最も早い成長・成熟への道といえます。癒しとは、あなたが価値ある存在として回復し、悲しみや問題から自由になること。

自分自身を癒し、『真実、幸せなリレーションシップ』への人生へと……」

どうしよう!! どんどん「ヒーリングセミナー」にはまっていく自分がいる!!しかも、この「ワークショップ」は3日連続で行われる予定で、値段もなんと94,500円もするのである。

「高い!!高すぎる!!」

しかし。

私はこのワークショップに参加することを即決した。何故なら、私には背に腹は変えられないという切実な思いがあったのである。当時の私には、お金よりもとにかく何かにすがりたかったのだ。

「誰か私を救ってください!!」

という切ない願望だけが先走っていたのである。

結局、私はその金額を支払って、2002年1月12日~14日までの3日間の「ワークショップ」に参加した。その「ワークショップ」後、自宅でしばらくの間私は茫然と日々を過ごしていた。そして、突然、「一人旅に出よう」と思いついたのだ。
「旅に出ることで何かが変わるかもしれない。」とごく淡い期待を抱いていたのだ。

そこからの行動力は早かった。とるものもとりあえで、私はその日の秋田行き深夜バスに乗り込んだ。

それからの10日間。私は一人で東北をいきあたりばったり周遊していた。「青春18きっぷ」を使って移動したため、移動手段はローカル電車である。そのルートはこのような経路である。

●秋田→盛岡→仙台→松島→山形→新潟→佐渡→東京

今、振り返ると不思議に思うことは、

「何故、山形まで一人旅に出られるのに、東京のオフィスに出社できないのか?」

ということである。実は、この矛盾には自分自身も十分気付いていた。

「本当は、うつではなくて、単に現実から逃げているだけではないだろうか?」とも思っていたのだ。

また、新潟から佐渡へと向かうフェリーに一人で乗っている時、私は激しく自問自答したものである。

「私は何でこんなところにいるのだろう?」

精神科医からの衝撃的な一言

予定では、1月31日に復職する予定になっていたのであるが、やはり当日の朝、どうしてもベッドから起き上がることができない。猛烈な拒絶反応を起こしているのだ。私は、10時すぎまでベッドでうずくまっていたが、たまらず心療内科へ駆け込んだ。

病院で先生はこう尋ねた。

「最近、どうですか?」

「実は、10日間、一人旅していました。そして、本当なら今日復職するはずだったのですが、今朝どうしても起きられなくて、会社に行けなかったのです。」

「そうですか。10日間も一人で旅行できたのですね。素晴らしい進歩ですね。薬が効いたのでしょう。」

そこで私はこう切り返した。

「でも、今朝、どうしても起きられなかったのです。」

「目覚まし時計は何個かけていましたか?」

「え?」

私はしばらくの間、質問の意図を読み取れず、真っ正直にこう答えた。

「一つです。目覚ましは鳴っていましたし、目は覚めているのですが、どうしても身体が起き上がれないのです。」

「そうですか。それなら、目覚まし時計を増やした方がいいですね。どうも薬の影響でそうなったのではなさそうですし。単に怠けですね。自分をもう少し奮い立たせないといけません。」

私は驚愕した。「目覚まし時計を増やす」という物理的な解決方法に。そして、医者に「怠け」と言われたショックに。最初は、「ギャグかな?」と思ったのだが、違う。違うのだ。

心療内科の先生は各自のスタイルを持っている。そして、私も2回転院したからこそ分かるが、先生によって重視するポイントが違うのである。そして、この先生の場合は「自分が処方した薬に絶対的な自信を持っている」タイプの先生だったようである。

当時の私は「怠け」という言葉を真に受けてしまい、深刻に落ち込んだ。自分は「怠け」なのだ、と。私は自宅に帰ると、またベッドの中にうずくまった。

(次回へ続く)

うつの技術(サラリーマン版)~まだ辞表は出さないで!2014年11月09日より一部抜粋

目次
(1)「ブログでは書けない僕の休職日記」
(2)ストーリー編「社会人二年目の異変~何かが狂ってきた」
(3)ストーリー編「初めての休職~なかなか復職できない現実」
(4)マインド編「本当に辛いときは、絶対に遠慮しないこと~溺れるものは藁をも掴みまくれ」
(5)テクニック編〜「就業規則は穴があくほど目を通すこと!」
(6)あとがき

うつの技術(サラリーマン版)~まだ辞表は出さないで!

休職4回、退職4回……うつ病歴12年のサラリーマンの著者がうつと上手に付き合う方法を公開。自身が体験したストーリー、経験から得たマインドの持ち方、自立支援制度の利用法など、”うつの技術”を教えてくれます。サンプルも必読!
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