【JR山手線支柱事故】鉄道だけではない!あらゆる業界に潜む大惨事発生リスク

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4月12日早朝、線路脇の支柱が倒れ山手線と京浜東北線がストップした事故。奇跡的に死傷者は出ませんでしたが、一歩間違えば大惨事につながっていたことは想像に難くありません。作家の大石英司さんはメルマガで、「この事故は社会のあらゆる部分で大なり小なり抱えている問題」と指摘しています。

JRのdecision making

『日刊 大石英司の代替空港』2015.4.14号より一部抜粋

JR、土日で作業員集まらず支柱の工事先延ばし

緊急度が高いと判断したケースでは、施工会社以外にも要請して人手を集めることもあるが、今回は「倒れるほどの傾きではない」と判断して先延ばししたという。

集められなかったわけじゃないんだよね。それが大変だから見送っただけの話。

この問題は、鉄道に限らず、いろんな業界や組織のリスク・マネージメントとして応用出来る問題だと思います。

問題の一つは、技術的に結果を予見できたのか? いくら、過去に類似の事故が無かったとは言え、傾いた柱がいつかは倒れるだろうことは誰にでも解る。それが明日か5年後かの話に過ぎない。ましてや、片側をケーブルで引っ張り、しかも毎日、数百トンの重量の電車がひっきりなしに走っていれば、その振動で傾斜が増幅するだろうことは、素人にも察しは付く。恐らく、これが事故になり裁判になったら、予見可能性という部分で、JRに勝ち目は無かったでしょう。

もう一つは、そこに組織としての decision making はあったのか? 私が一つ思うのは、首都圏の私鉄は、ひっきりなしに保守点検をしているでしょう。NYではやっている地下鉄の終夜運転を東京でやらないのは、その保守点検があるからだということになっている。

それを熱心に行うと、ほとんどのインシデントは、マイナー・トラブルの内に発見、駆逐されることになる。当然、通常運航を止めてまでメンテするという事態は、限りなく減らせる。

すると、通常運航を阻害しないことが当たり前になってしまい、いざ、それを止めなければならないとなった時に、誰も判断力を持たず、決断出来なくなってしまう。

航空機事故でも、似た事例はいっぱいあります。マイナー・トラブルの修理を先送りしたばかりに、墜落に至ったケースが。

これは私たちの仕事のいろんな場面でも言えることで、タスクを効率良く進めるためのマニュアルやシステムが成果を上げて、滅多にトラブルが起きなくなった時、いざトラブルに直面すると、やるべきことは解っているのに、決断能力を喪失してしまう。

航空機事故で言えば、ピトー管凍結による墜落事故がそうです。ピトー管の凍結は、パイロットなら誰でも想定できる。所が、それがオートパイロットとひとたびコネクトしてしまうと、自分が何を為すべきか、訓練を受けたパイロットがお手上げになってしまう。そういうトラブルを経験していないばかりに。

でも、山の手線は止められないでしょう? という意見が散見されます。恐ろしい考えです。航空業界ではそんな発想は許されない。飛行機では、何かひとつの問題が見つかると、その航空機は全部地上待機になります。戦闘機がそうだし、先日もバッテリー問題で787が地上待機を強いられたばかりです。止めれば良いんです。それだけの話です。

数万本の柱をチェックするためには今月いっぱい掛かるそうですが、その間、止めるのか? 必要なら止めるだけの話ですが、これもためにする話で、実際に緊急確認が必要な柱は、同様な工法で梁を外した柱だけです。たぶん数本とか、数十本とかそんなものでしょう。

この事故は、ひとりJRの問題と軽視せずに、私たちの社会のあらゆる部分で大なり小なり抱えている問題として考えるべきでしょう。

『日刊 大石英司の代替空港』2015.4.14号より一部抜粋

【2015.4.14号の目次】
・JR、土日で作業員集まらず支柱の工事先延ばし
・民主党内に執行部批判も「回復の兆しすらない」
・【グローバルアイ】日本、議論ではなく「真の反省」を
・創設メンバーから台湾除外 中国当局「国と認めず、他国と差をつけた」と新華社
・5つのチャートで見る中国海軍の急速な拡大
・ヘイトスピーチ対策:法務省の電話相談がっかり
・辺野古移設は日本の利権の話 米軍の要請ではなく国防無関係
・生活・小沢氏が米誌に辺野古新基地不要論
・IWC:「日本の調査捕鯨、説明不十分」 追加作業を勧告
・領空侵犯スクランブル発進 空自が訓練公開中に「本番」
・日本から漁船漂着=いけすに生きた近海魚-米オレゴン州
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・ボーイングが飛行機のシートでも眠りやすい「抱きベッド」の特許を取得
・第1回国際ドローン展、5月20日から幕張メッセにて開催
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・有料版おまけ FCS3A

 

『日刊 大石英司の代替空港』

著者/大石英司
作家、鹿児島県出身、川崎市高津区在住。国内外の注目ニュースに関して alternative な視点を提供するメルマガはビジネスマンなら必読です。
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