【いじめ対談3】正論、情、脅し。弁護士と探偵が伝授、いじめの解決法

2015.12.04
by kousei_saho
 

加害者側と学校が打ち合わせをしているケースも

阿部:また他に厄介なケースとして、酷いいじめが起きた場合に、学校が管理者としての責任を問われる可能性があるんです。そうなると、加害者側と学校側の利害関係が一致するってことがあるんですよ。現に私立校では、かなりの確率でいじめの隠蔽が起きていて、なかには加害者の親と担任や校長が、レストランで会って打合わせしてたりすることもあるんです。

まぐまぐ:おお……。

阿部:よくやるなあと思うんですけど、そういう風に加害者と学校の利害関係が一致すると、加害者側の反応がたいてい「そっちのほうがモンスターだ」ってなるんですよね。また、いじめ解決のために第三者委員会を作るとしても、メンバーは学校が選任するんですよ。学校側に有利な意見を出しそうな人を。で、そのメンバーもボランティアではないので、学校とか理事会から報酬をもらっているわけですよね。となると、たいていの結果が「いじめと類似したような行為や被害があったかもしれないけれども、厳密にいじめではない」と。……本来なら、被害者側の推薦する専門家を1人ないし2人入れるべきっていう話はあるんですけども、そういう学校ってたいてい被害者側が推薦する人は入れない。そのうえ議事録も開示しない。そういう問題って、僕らが手掛けている案件だけでなく、他にも結構あるようなので……。

谷原:法的にいうと……いじめが校内にありましたと。そのいじめによって怪我をしました、あるいは自殺をしましたってなりますね。そうすると被害者の親は、その被った損害を誰かに賠償請求しましょうという話になります。まあ刑事の問題とは別に民事で。そうすると、誰に請求するかっていうと、まずいじめた張本人の子供かその親、同時に学校も訴えるんですよね。学校を訴えるのはなぜかというと、学校の校長と教員は生徒の学校の関連する活動の中においては、生徒の生命身体の安全を守らないといけない義務がある、と。そのためにいじめられそうな子、いじめそうな子の普段の行動をよく観察して、そういうことが起こらないような万全の措置を講じる義務がある、ということになってるんです。

みらい総合法律事務所 弁護士の谷原誠さん

みらい総合法律事務所 弁護士の谷原誠さん

まぐまぐ:なるほど。

谷原:そうすると、いじめがあってそれを認識できたにもかかわらず、漫然と放置したという話になってくると、その義務違反になるので、今度は学校も訴えられるっていう話になってくる。するとどうなるかというと、自分たちが損返しを受けるかもしれない。あるいは、教育委員会から何か措置を受けるかもしれないという話になる。そうなると、いじめがなかったことにしたほうが、自分の責任は問われないという話になって、加害者とくっついてしまうというような方向になっていく。

まぐまぐ:……酷い話ですが、そういう方向になりかねないのは分かるような。

谷原:さっき阿部さんが「証拠が重要だ」とおっしゃっていたのも、その構造があって……。結局は、法律に基づいて学校の責任を問うためには、また加害者側の責任を問うためには、それが違法行為である、悪質な行為であるということを証明しない限りは、相手にいじめ行為をやめさせたり、反省をさせたり、法的責任をとったりという方向に行かないんですよ。だからこそ、「事実関係を確定する」っていうのが最も重要になるので、阿部さんが客観的な証拠をとるために全力を集中する、そういう構造になってますね。

阿部:ただ、僕らがやってることと近いことって、実は保護者の方にもできることが結構あるんですよ。学校の中とか、保護者だったら入れる場所もかなりあるんで、できれば保護者の方にも証拠取りというか、それにプラスしていじめの状況を把握するっていうのは、是非やっていただきたいって思っているんですね。ただ、素人考えで無茶や暴走をすると、自分のほうが悪いことになったりしますので、ある程度の範囲内でということなんですが。

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