種々の原油「下げ」要因
エネルギー価格は、「投機筋」の動きに影響されるので、予測がなかなか難しいです。しかし、常識的に考えると、「下げ要因」はたくさんあります。
原油価格は中国経済の減速に伴う需要の減少などで下落が続いている。
石油輸出国機構(OPEC)が12月4日の定時総会で減産を見送ったことで下落に拍車がかかり、ニューヨーク市場の米国産標準油種(WTI)は6年10カ月ぶりに1バレル=35ドルを割り込んだ。
今後は経済制裁が解除されるイランからの輸出も見込まれるだけに、米国の輸出解禁で原油安の長期化も予想される。
収入を原油輸出に頼る新興国にとっては打撃になりそうだ。
(同上)
・中国経済減速による需要減少
・OPECが減産しない
・イランの制裁が解除され、市場にもどってくる
・アメリカが、40年ぶりに原油輸出を解禁する
これらすべてが「下げ要因」。繰り返しますが、エネルギー価格は、投機筋の思惑で上がったり下がったりする。しかし、需給関係でみれば、明らかに「原油価格低迷は長期化しそうだ」といえるでしょう。
原油価格低迷は、日本にとっての「神風」
アメリカの原油輸出解禁は、ロシア、中東産油国、ベネズエラなど「資源依存国家群」の経済に大きな打撃を与えます。しかし、わが国日本にとっては、まさに「神風」。
一方、日本では「原油調達先の分散化が進むことは、歓迎すべきこと」(石油元売り首脳)との声が上がっている。
原油安で全国のレギュラーガソリンの店頭価格はすでに5年11カ月ぶりの低水準となっているが、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミストは「米国産原油が世界市場に出回れば、日本の輸入価格の下落につながる」として、ガソリン価格も更に下がると予想する。(同上)
ガソリン価格だけでなく、「電気料金」だって下がっていくでしょう。
さらに、エネルギー価格下落は、日本経済の「大問題」を解決します。
福島原発事故後、全原発が停止になった。その分を火力発電で補うことになった。だから、原油・液化天然ガス(LNG)輸入が激増した。原油・LNGは、つい最近まで高かった。安倍政権は、政策的に「円安誘導」を行っている。結果、「貿易赤字」が「大問題」になっていた。ところが、原油価格暴落で、日本の貿易赤字問題は、解決にむかっています。すでに単月では、「黒字」の月も出てきている。
財務省が19日発表した10月の貿易 統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1,115億円の黒字となった。
貿易黒字は7カ月ぶり。
原油や液化天然ガス(LNG)の大幅下落で、輸入が2桁減となったのが主因。(時事ドットコム)
というわけで、アメリカの原油輸出解禁、その他の要因でエネルギー価格が下がることは、日本にとって「神風」なのです。
image by: Shutterstock
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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