米日がAIIBの運営が中国の言いなりになるのではないかとその不透明性を盛んに言い立てているのは滑稽である。まだ組織が出来ていないものが透明であるかどうかと問われても、当事者は答えようがない。その言い方そのものが、どうせ世界の田舎者である独裁国がやることだから怪しいに決まっていると思い込む、旧態依然の差別意識の現れと言えるだろう。
AIIBの初代総裁になると目されている金立群は、北京外国語大学大学院でシェークスピアなど英文学を学んだが、英語だけでなくフランス語も能くする語学の才能を買われて80年に財務部に就職、87年から2年間米ボストン大学大学院で経済学を学び、卒業後直ちに世界銀行の副執行理事となり5年間の任期を全うした。一旦帰国して94年から財務部の世銀との連絡役を務めた後、03年にはアジア開銀の副総裁となり、当時の黒田東彦総裁(現日銀総裁)に仕えた。08年からは中国投資有限責任公司の監査長、13年からは中国国際金融公司の会長の職にあった。
つまりは中国きっての国際金融のプロであり、しかも世銀とアジア開銀の大幹部として計10年間、実務に携わり、その両行の甘いも酸いもすべて噛み分けた人物である。米日政府はまずはこういう有能な事実上の責任者と腹を割って意見交換して見極めれば良よかったのに、それをせずに、遠巻きから「怪しいぞ、危ないぞ」と言うばかりだった。米日はAIIBというバスに乗り遅れたのではなくて、21世紀に乗り遅れたのである。
『高野孟のTHE JOURNAL』Vol.182より一部抜粋
【Vol.182の目次】
1.《INSIDER No.781》
AIIBの「運営が不透明」?とは戯言
──SCO/BFAの15年の実績を知らない米日の暗愚
2.《FLASH No.095》
水素エネルギーと原発再稼働の二兎を追う愚
──日刊ゲンダイ4月16日付から転載
3.《CONFAB No.181》
閑中忙話(2015年04月12日~18日)
4.《SHASIN No.158》付属写真館
著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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