AIIBというバスどころか21世紀そのものに乗り遅れてしまった日米の誤算

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AIIBは、中国の最近の思い付きで降って湧いた話ではなく、2001年に中国とロシアが語らって発足させた「上海協力機構(SCO)」、それとほぼ同時にスタートした中国主導の”アジア版ダボス会議”「ボアオ・アジア・フォーラム(BFA)」の15年に及ぶ活動と、その枠組みの下での多国間経済協力の蓄積の中で時間をかけて熟成されてきたものである。

上海協力機構は、1996年に初めて中国、ロシアとキルギス、カザフスタン、タジキスタンの首脳が上海で会合した「上海ファイブ」を母体として、後にウズベキスタンを加えた6カ国を正規加盟国として2001年6月に発足した。直接のきっかけは、旧ソ連邦の崩壊後、ロシア国内ではチェチェン問題、中国国内では新疆ウイグル問題を抱える中、独立を遂げた中央アジア諸国内のイスラム過激主義や民族的な分離主義の危険に共同対処する必要が切迫していたことで、実際、同機構は02年に下部組織として「地域対テロ機構」を設立し、05年には露中、露印の合同軍事演習、また07年には加盟6カ国の大規模合同軍事演習を行うなど、テロ対策に力を注いできた。

その間、正規加盟国6カ国は不変のまま、「オブザーバー」としてモンゴル、インド、パキスタン、イラン、アフガニスタンの5カ国、「対話パートナー」としてスリランカ、トルコ、ベラルーシの3カ国、「客員」としてトルクメニスタン、ASEAN(10カ国)と独立国家共同体(旧ソ連12カ国だが正規加盟国とダブる)の2機関、さらに「加盟申請中」のネパール、バングラデシュ、アゼルバイジャン、アルメニアの4カ国を含めて周辺各国を順次取り込んで、(ASEANを10カ国と数えると)計30カ国によるユーラシア大陸を覆う地域協議機構として発展を遂げてきた。

特に9・11以降、テロ対策に重点を置いてきたのは事実だが、本来は02年採択の憲章が謳うように、

  1. 加盟国間の相互信頼と近隣友好関係の強化
  2. 政治、貿易、経済、科学、技術、文化、教育、エネルギー、運輸、観光、環境保護での効果的な協力の推進
  3. 地域の平和、安全、安定の共同確保
  4. 新たな民主的で公正で合理的なグローバルな政治・経済秩序の促進

を目標に掲げる包括的な地域機構で、20世紀型の米国中心の国際秩序を卒業して、“ユーラシアの世紀”と呼ばれる21世紀にふさわしい新たな国際秩序の形成をめざすものである。

>>次ページ ボアオ・フォーラムの補完的役割

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