AIIBというバスどころか21世紀そのものに乗り遅れてしまった日米の誤算

vinnstock/ Shutterstock
 

この特に第2項の経済の分野に関して上海機構を補完する役目を果たしてきたのが、2001年2月に中国政府の強いイニシアティブの下で設立された「ボアオ・フォーラム・フォー・アジア」(BFA、日本ではボアオ・アジア・フォーラムと表記)である。アジアと謳っているためロシアやその周辺国は入っていないが、同フォーラムとしてロシアとの対話は続けているようである。ボアオと上海機構とAIIBの参加国については別表参照。

ボアオ(博鰲)は中国・海南島の海浜リゾートがある地名で、年々の会議はそこで開かれる。メンバーは日本を含むアジア25カ国プラス豪州の計26カ国の政府首脳、経営者、学者、NGO 代表などの個人もしくは組織で、現在は福田康夫=元首相が理事長曽培炎=元中国副総理(経済担当)が副理事長を務めている。今年の年次会議は3月26日から4日間開かれ、習近平主席もスピーチした。スポンサー団体には米ビル・ゲイツ財団なども名を連ねている。
BFAホームページ(英語版)

ここでの議論とそれをベースにしたウェブ上の「Boai Review」などを通じての発信はまことに自由闊達なもので、その中では、中国自身の経済動向や南シナ海問題を含めた対外関係、日中・米中関係などと共にアジア・ユーラシアの交通・運輸を中心としたインフラ整備やそのための資金需要を賄う新しい金融機関の構想についても、早くから論じられてきた。

AIIBはまずもって、中国の言う「一帯一路」経済圏構想──ユーラシアを横断する陸上・海上の物流交通路を整えて「21世紀はユーラシアの世紀」と言われるにふさわしいインフラを備えることに向けられるだろう。反中・嫌中派は、そんなことは絵空事だとか、海外土木工事を請け負ったり高速鉄道技術を売り込んだりしようとする中国の商売エゴだとか言ってケチをつけているが、そうではなく、その構想は部分的にはすでにSCO/BFAの枠組みの下での多国間協力プロジェクトとして実行に移され、その問題点を含めてさんざん議論されてきていることなのである。

>>次ページ すでに始まっているADBとのコラボ

print
いま読まれてます

  • AIIBというバスどころか21世紀そのものに乗り遅れてしまった日米の誤算
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け