現地在住の日本人が報告。テロ以降、フランスに何が起こっているのか

 

11月27日にアンバリッドでテロ犠牲者追悼式が行われたのですが、その日は、各家庭の窓から国旗を掲げましょう、とオランド氏が提唱して、国旗がバカ売れしているというニュースも流れたので、個人的にはゾッとしていたのですが、当日、電車の窓から見ると、確かにチラチラと国旗は見えましたけれど全家屋の1割くらい? それ以下かもしれませんでした。よかったよかった。フランス人、政府迎合する気なんて全然なかった。

12月、クリスマスイルミネーションは、不景気のせいなのか、自粛なのか、近年になく殺風景なものでした。息子は、クリスマス市で有名なストラスブールに住んでいますが、かわいらしい市場のスタンドのまわりを、銃を持った機動隊警察がうろうろしていて、雰囲気をぶちこわしていたそうです。お正月の、エッフェル塔花火中止されました。そのかわりに、凱旋門にトリコロールのイルミネーションが映し出され、なんともね。ま、きれいでしたけどね。

1月6日から冬のバーゲンが始まりました。今年は、暖冬のため冬物衣料は売れず、その上にテロがおこったためクリスマス商戦も振るわず、おまけに観光客も激減。とにかくこのバーゲンで挽回したいのでしょう、わたしも、ものすごい数の広告メールを受け取りました。でも、どうかな…、実は今日(1月8日金曜日)、ショッピングセンターを歩きましたが特に混雑している印象はありませんでした。若者向けカジュアルウエアの店が、全店70%引きと書いてあって、そこだけは人で埋まっているのが見えましたが。

物価上がる一方税金上がる一方上がらないのは給料だけ。わざわざ、テロがおこるリスクのある繁華街に出かけて散財する必要もないですよね。庶民の購買意欲下がる一方なのかもしれません。

ただし、オランド大統領は、年頭挨拶で、今年は何が何でも経済回復させ、失業率減らす、と言ってましたからね。来年は大統領選ですから、今年は国民人気取りに走るはず。どうなることやら。

とにかく、もう世界の注目は集めなくてもいいです。スターウォーズを越えるフランス映画が大ヒットするとか、パスツール研究所が癌の特効薬を発見するとか、そういううれしいことで、注目されるなら歓迎ですけどね。

私の職場は、小さな印刷事務所なんですけど、お年寄りの多い地区なので、ちょっと1枚だけコピーしてくれないか、などと尋ねてくるお年寄りが結構多くて、そういう人のためにはコピーもしてあげているんですね。先日、1人のおじいさんがコピーをしてほしいとおっしゃって、してさしあげたら、「わたしたちの国はとても美しい国だったよね」とおっしゃったんです。いきなりだったので、一瞬、何をおっしゃっているのかわからず、きょとんとしていたら、「私たちの国は、美しい国だったよね」とまた繰り返されて、そこで私は理解し、「ええ、ええ。今はちょっと悲しいことになっているけれど、それでも私はフランスが好きですよ」と答えました。おじいさんが私の答えに満足したのかどうか、それ以前に、わたしの下手な発音を聞きとれたのかどうかさえはっきりしないのですが、「親切にしてくれてありがとう」と言って、たった1枚のコピーに1ユーロも置いて、去って行かれました。

82歳の私の父より、まだ年上であろうと思われるそのおじいさんが見てきたフランスはどんなものだったのだろう、と、その日は少し感傷的な気持ちになりました。

今年はいい年になりますように。

著者/MAO(「移民への道」連載。フランス・パリ郊外(LES ULIS市)在住)
バブル末期に幻想を抱いて渡仏。こんなはずじゃ、と思いつつ、だらだら過ごしてはや10年。パリ在住日本人が避けて通る地域を転々としたあげく、ついに悟りを開き、「おフランス」にて大阪のおばちゃんになりきる決意。肉屋のおじさんと仲良くなるのが得意。

image by: Shutterstock

 

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