「墓地の裏にある洞穴はなぁ…」意外と知らない「口伝」の重要性

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ご先祖様の事を知るための史料といえば、紙の書物や墓石の文字など「有形」のものというイメージがあります。しかし、忘れてはいけない「無形」の史料といえば、言い伝え、つまり「口伝」です。無料メルマガ『自分のルーツ(祖先)を1000年たどる技術』の著者・丸山学さんは、史料としての言い伝えの重要性と、「口伝」が失われる危険性、その対策について語っています。

「言い伝え」も重要な史料

戸籍の範囲を超えて江戸時代の先祖探しを行う場合には様々な史料必要とします。

江戸時代に武士だった家であれば各藩の藩士名簿(分限帳)を見ますし、農民であったという場合には、ご先祖様が居住していた村の宗門人別帳(江戸時代の戸籍帳のような文書)や検地帳を探して閲覧していきます。

つまりは「」に書かれた史料を必要とする訳です。

時には墓石に彫られた文字によって江戸期のご先祖様名が判明する場合もあります。こちらは「文書」ではありませんが、石に刻まれた文字を読み取るという意味では紙の文書と同じです。

しかし、忘れてはならないのが「口伝」です。紙には書かれていないけれど、ご先祖様についてのエピソードが代々口頭で伝えられている事も実に多いです。

「それを記した文書などは存在しないのですか?」と、お聞きすると、「代々あたりまえのように話で伝わっているからなあ…」と、言われたりします。

今、近畿地方で「400年たどるコース」の案件の調査真っ最中ですが、既に文書類や墓石の文字を読み取り江戸時代中頃までのご先祖様名は明確になっています。しかし、江戸時代より前~つまり、戦国時代に何をしていたのかが今ひとつはっきりせず、それを示すような史料も現存していませんでした。

そこで、私はご依頼人家と同族に当たるであろう家々に、「江戸時代より前に何をしていたか?どこから来たのか?何かお聞きしていませんか」と、確認していきました。はじめ現役世代の方々に話を聞いていた際には、皆様あまり関心がなく「よく分からないなあ」という回答ばかりでしたが、たまたま現当主のお母さまと電話で話をしましたら、

「祖先の事はよく分からないけど、戦国時代まで墓地の裏手にあった小さな城の武士だったというのははっきりと伝わっています。墓地の最上段にある洞はその武士のものだから大切にしなければいけないと代々云われているけど…それ位しか分からないんですよね」

との事。それって凄い大事な話じゃないですか~!

こうした話は誰かが紙に書き留めるまでは「史料」にはなりません。でも、実際には紙で伝わろうが口頭で伝わろうが重要な史料である事には代わりありません。但し、決定的な違いはご先祖様について関心がない方はその口伝を真剣に聞かないですし、それを次の世代にも伝えません。

でも、紙で「○○家の由緒」と題してあれば、さすがに捨てられる事はありません。関心が無い方が間に入っても次世代に受け継がれていきます。

おそらく、今こうしている間にも貴重な言い伝えがあちこちで消滅している筈です。重要なのは口伝も史料の1つとして出来る限り収集する事。そして、その口伝をとにかくに書いて相応の題名を付けて保管しておく事(仏壇の中など捨てられる可能性の少ない場所に)。

ご先祖探しをされる場合には、地域の古老などにも出来るだけ話を伺いましょう。きっと、有益な情報を得られる筈です。

image by:Shutterstock

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著者/丸山学
丸山行政書士事務所代表。相続手続き、会社設立などの行政書士業務を行う傍ら、依頼者の家系図を作成するサービスにも積極的に取り組み、家系図作りのエキスパートとしてテレビ・ラジオ・雑誌等のマスコミ出演も多数。まぐまぐ!からは、無料メルマガ『自分のルーツ(祖先)を1000年たどる技術』を配信中。
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