なぜ、アメリカ大統領選はこんな茶番劇になっているのか?

 

安倍政権の逆方向

それは世界にとってはもちろん日本にとっても深刻な事態で、安倍政権の超タカ派路線は要するに反オバマの冷戦的な守旧勢力こそが米国の主流だという思い込みの上に成り立っているので、共和党のタカ派大統領が誕生すれば安倍は勇気百倍、その路線をさらに突き進めるだろう。安倍が直結しているのはジョゼフ・ナイ、リチャード・アーミテージ、マイケル・グリーンなどの「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれる軍産複合体の利益代弁者である。中国や北朝鮮の「脅威」を煽って日本を脅し上げ、オスプレイやミサイル防衛システムなどの最新鋭の兵器を売り込むのが彼らのビジネスで、このラインを通じて日本の対米属国化はさらに深まることになる。

端的に言って、今世界にとって最大の難問は、老帝国アメリカの徘徊癖や暴力癖をどのように防止しておとなしく寝かしつけるかという介護問題である。日本は本来、欧州やロシアや中国と語らって米国を真綿で包むようにしながら導いて、21世紀の多極世界の秩序作りに軟着陸させるよう主導権を発揮しなければならないが、安倍がやっているのは真反対で、米国の最も退嬰的な部分と癒着して、中国との軍事的対決を辞さない「強いアメリカ」に立ち戻るよう煽り立てて時代の流れを20世紀へと逆行させるのを助けている。こんなことでは、せっかくの伊勢・志摩サミットも、「日本が主導して中国包囲網を作り出すのに成功した」などという混濁したメッセージを世界に発するだけの場に終わるのではないか。

 

 

高野孟のTHE JOURNAL』より一部抜粋
著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。
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