人々は先祖に前述のような供え物を捧(ささ)げるのにもう一つの思惑がある。先祖に「大富豪の生活」を提供する見返りとして、今度は自分たちも先祖からのご加護でこのような生活ができるようになるのを願っているのである。
その際、人々と先祖との関係は、お金と高価な贅沢品を介した一種の「賄賂の収受」と化している。この世で大富豪となるためには、まず党と政府の幹部に賄賂を贈って彼らから金もうけのチャンスを与えてもらうのと同じように、ご先祖様にお金と別荘と美女をちゃんと供えれば、それらのモノはいずれか自分たちの手に入ってくるのではないか、という期待が人々の心にあるのである。
そういう意味では、「腐敗」というのはそもそも現代中国人の価値観の一部であり、中国流の即物的な実利主義精神に深く根ざしているものである。
党と政府の幹部における腐敗の蔓延(まんえん)は、このような文化的背景があってのことであろう。従って習近平政権が腐敗の撲滅にいくら力を入れても、腐敗は撲滅されることはまずない。
中国人の精神と文化を変えない限り、腐敗は「永遠不滅」なのである。
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『石平(せきへい)のチャイナウォッチ』
誰よりも中国を知る男が、日本人のために伝える中国人考。来日20年。満を持して日本に帰化した石平(せきへい)が、日本人が、知っているようで本当は知らない中国の真相に迫る。
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