世の中には星の数ほどの企業が存在しています。無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では、それらの頂点の一角に立つ「トヨタ」の経営方針、経営のカリスマ・本田宗一郎氏が若手社員にいつも尋ねていたこと、そしてウォルト・ディズニーがディズニーランドを作るきっかけとなった意外なエピソードなど、成功した企業の「経営哲学」をさまざまな方向から検証していきます。
未知なる顧客欲求
顧客・欲求要素におけるすべての日常業務においての「改善」活動は「より良く」をかなえる売上アップや生産性向上のための当然の活動です。この「カイゼン」のチャンピオンは、言わずも知れた「トヨタ自動車」です。トヨタでは従業員の1人1人に「知恵を絞る」ことを習慣化させており、これが「強みの文化」の中核となっています。
そうしたら「カイゼン」を行ってさえいればよいかというと、いくら「ガソリン・エンジン」の品質を上げても「ハイブリット・カー」は造れません。より良いものというのは、「連続」ばかりでなく「非連続」が必要です。より良い顧客満足のために行う「非連続」がイノベーション(革新)です。さらに革新されたものが定着すると、同じくして「改善」繰り返されます。
ここからさらに話を継いで行きます。欲求のなかでもっともデリケートなものは、未知なる潜在しているものです。特に最終消費者を顧客とする場合で、その顧客本人が現物・現実の価値を与られてはじめて「欲求のかたち」を知ることになるからです。本人すら知らないのだから、「気配」から予断するより方法はありません。
話は変わりますが、本田宗一郎さんがまだ存命であった本田技術研究所では一風変わった習慣があったそうです。課長クラスが若手を飲みに連れて行くと「最近街で見つけた面白い話はないか」と必ず聞くのだそうです。その要望にうまく答えると、お誘いの回数が増えたようです。
なぜそんな習慣があったのか、何故かを探ると本田さんに行き着きました。本田さんが役員といっしょにいると、この「最近街で見つけた面白い話はないか」と頻繁に聞いたのだそうです。それで役員は、部下に「最近街で見つけた面白い話はないか」を聞くことになり研究所の全員が「面白い話」の感度が上がることになったようです。
本田さんにどんな意図があったのかその真意は分からないのですが、ただ言えることはホンダが「街」への関心と感度がよくなったということです。現の市場(顧客)の心は、論理や調査で測り知ることができるでしょうか。中堅企業のマーケッター(企画マン)も、街で見かける人の何気ない行動や出来事などの気配から「アイディア」を閃めかせているみたいです。
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