オバマが広島で謝罪すると日本は不利になるという「逆説的論理」

 

ご存知の通り、オバマ大統領は今年末の選挙で大統領に選ばれた候補者ととってかわることになり、来年の新大統領の就任演説の直後にホワイトハウスを去ることになります。

つまり現在は最後の半年ちょっとでいわば「伝説づくり」をしている真っ最中で、イランとの核合意やキューバとの国交回復などは、そのような最後の1年間の駆け込み状態での「実績づくり」を実行中ということなのです。

そのような中で、多くのアメリカ人が「正義の戦い」と考えている第2次世界大戦での勝利を決定づけた(といっても実際は微妙ですが)広島・長崎での原爆投下は、アメリカの「聖戦」の中の1つの手段でしかなく、いまだに「なんで謝る必要があるの?」と考えているアメリカ人は圧倒的に多数なわけです。そのような中でオバマさんが謝罪する(かどうかはわかりませんが)というのは、彼らにとっては「許しがたい反逆行為」という風に映ります。

しかも、ここでトバッチリを受ける可能性があるのが、その謝罪された側の当事者であるわが日本。というのも、この冒頭に紹介した記事の著者が言うように、「日本は歴史問題で十分に謝罪していない」というイメージが強調されてしまう可能性があるからです。

すると逆に(どちらかといえば日本と親密だった)アメリカの共和党系の保守派の勢力たちに、日本の歴史問題を批判するための材料を与えることにもなりかねません。つまり日本はアメリカのトップのアクションで気が収まるかもしれませんが、それをやるアメリカの国内での反発を考えると、歴史問題がさらに悪化するということにもなるわけです。

ここで、皆さんは、ルトワックの「逆説的論理」(パラドキシカル・ロジック)のことを思い出されるかもしれません。

日本はオバマさんに広島で謝罪されるとかえって厳しい立場に追い込まれるかもしれない…、われわれはこういう部分も考えておなければならないのです。

image by: David Peterlin / Shutterstock.com

 

日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信
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