これだけ、子宮頸がん予防ワクチンの効果に疑惑の目が向けられているにもかかわらず、政府はなぜ接種を禁止しようとしないのか。
山本太郎は、米製薬業界を後押しする勢力の存在を指摘し、TPPとのからみで日本政府がどう対応するのかを追及した。
「グラクソとかメルクとかは、勧奨中止になっているのは日本だけだぞ、と。WHOも勧奨再開を勧告しています。集団的自衛権、原発再稼働、TPPなどを日本に要求し、安倍内閣が完全コピーしたと言われるアーミテージ・ナイ・レポートを発表したCSISは、子宮頸がんワクチンについて日本政府に勧奨再開を求めるレポートを出していますよね」
「TPPが発効し、メルクとかグラクソとかが、ISDS条項で数百億の損害賠償を請求してきたら、日本政府はどのような対応をしますか」
塩崎大臣は「TPP協定では、健康など公共の福祉に係る正当な目的のため合理的な規制を行うということについて妨げているわけではない」などと、終始逃げを打った。この曖昧な答弁から、ISDS条項への懸念で、省内でも対応に苦慮しているさまが窺える。
製薬会社にとって、「予防医学」の世界的流行は、またとないチャンスだ。
高度なハイテク技術を有する世界規模の製薬会社が、日本の「ワクチン村」に乗り込んできて、国費助成つき定期接種という、「金のなる木」を手に入れた。そこまでは思い通りの展開だっただろう。
ところが、この子宮頸がんワクチン接種を勧めていた日本政府が、副反応の患者が続出するのを見て2013年6月14日、「一時勧奨中止」とした。法定接種となってから僅か2か月余りのことだ。
これによって、子宮頸がんワクチンの接種率が65%から4%に激減したことが、阪大大学院医学系研究科の調査によって分かっている。
グラクソ、メルク両社がカネの力で巻き返しをはかろうとしているのはあきらかだ。WHOやCSISはもちろん、ワクチン行政の審議会メンバーである日本の医学者を研究資金提供で手なづけ、内外から厚労省にプレッシャーをかけている構図だ。
山本は塩崎に問いただした。「まさか、塩崎大臣、この子宮頸がんワクチン、何としても大臣在任中に勧奨を再開しようということを考えられているわけじゃないですよね」
塩崎はこう答えた。「ワクチン行政はやはり科学で判断をしていかなければならないというふうに思います」
科学で判断とは、どういうことか。それを言うなら、HPVワクチンが子宮頸がんの予防に効果があることを論理的に証明しなければならない。
厚労省は福島みずほ議員の質問に対しても、「前がん状態までは減らせるが、最終的に子宮頸がんを減らしたというエビデンスはない」とはっきり答えているのだ。
政府が考えるべき基準はただ1つ。将来の日本をつくる若い女性たちの健康確保だ。企業の利益ではない。良識をもって冷静に判断すれば、おのずから正解は出てくる。
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『国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋
著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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