しかし、わざとらしさがどうしても気になるという人のためによい方法を一つお教えします。それは裁判や交渉で弁護士が使う「誘導尋問」を応用する褒め方です。誘導尋問とは、実際に聞きたい答えを引き出すため、一見関係ない質問をすることです。
たとえば「あなたはお茶を飲んだとき右手で持ちましたか、左手で持ちましたか」という質問をしたとします。聞かれた方は「どっちだっけ」と考えますが、実はその時、本当に聞きたいのは手のことではなく、「お茶を飲んだこと」自体だったりします。右か左を答えると、お茶を飲んだことは認めたことになるわけです。
さて、この理論を応用したほめ方は例えば次のようなものです。「そのバッグは、すごくカッコいいですね。そろそろバッグを買い換えようと思っているのですが、そういうバッグが欲しいです。どこのブランドか、教えていただけますか?」と質問してみるのです。わざとらしくないですね。
どこにポイントが有るか、もうおわかりだと思います。「どこのブランドか、教えていただけますか?」という質問の形にはなっていますが、その前提として、相手が趣味のよいバッグを持っている、またその人がセンスがいい、というメッセージが隠れています。ブランドを聞かれたのに、なぜか嬉しく感じます。これならあまりわざとらしさは感じないのではないでしょうか。
つまり、質問をすると、相手は、その質問に答えようとします。その質問に頭を支配されてしまうわけです。そこで、その質問の前提に、褒め言葉を入れておくことによって、わざとらしさを薄めてしまうわけです。
褒め上手は雑談上手です。褒めることに躊躇せず、いろいろな方向から、さまざまな手法で雑談を相手を褒めてみたいものです。
「人間は誰でもほめられることが好きなものだ」(リンカーン)
今回は、ここまでです。
image by: Shutterstock
『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』
人生で成功するには、論理的思考を身につけること、他人を説得できるようになることが必要です。テレビ朝日「報道ステーション」などでもお馴染みの現役弁護士・谷原誠が、論理的な思考、説得法、仕事術などをお届け致します。
<<登録はこちら>>