新・大塚家具はニトリに勝てるのか? 経営戦略のプロが「騒動後」を分析

 

この背景には両社のビジネスモデルの違いがあります。

大塚家具はメーカーから家具を仕入れて販売するという流通業としては一般的な仕組みでビジネスを展開しています。このような場合、メーカーと消費者の仲介という意味で付加価値は低く、高い利益率を実現することは難しくなります。一方でニトリは自社で企画・デザインから生産、販売まで、すべてのプロセスを自社のみで完結させるSPA製造小売業)というビジネスモデルを採用しています。

このSPAは、アパレルでいえばユニクロを展開するファーストリテイリングも取り入れていて、成功すれば非常に利益率が高くなるビジネスモデルといえます。

ニトリはこのようなSPAというビジネスモデルで高い利益率を実現し、大塚家具の年間売上をも大きく上回る営業利益を出し続けているのです。

このように財務諸表を比較してみると、大塚家具が家具・インテリア業界でニトリを抜き去り、リーディングカンパニーとなることは、果てしなく難しいと結論付けることができるかもしれません。

店舗数で15倍売上で8倍の差が開いており、営業利益が自社の売上を大きく超える企業を抜き去ることは常識的に考えても、不可能といっても過言ではないでしょう。

ライバル企業が年々拡大を続ける中で追い抜くためにはそれを上回るペースで成長を続けなければいけません。

仮に大塚家具がニトリを抜き去るためには、短期間で400店舗程度の出店とSPAといった商品の安定供給を図るためのビジネスモデルを確立させなければならないといえるでしょう。

ただ、可能性としては決してゼロではありません。

たとえば、アップルがじり貧の状態から並み居るライバル企業を抜き去り世界一の企業に上り詰めたように、製品やビジネスモデルのイノベーションに成功すれば、奇跡を起こすこともできるというわけです。

常識的に戦略のセオリーを駆使して正面から戦っても勝ち目がないことは、久美子社長も十分に理解しているはずです。

そのうえで、どのような革新的な戦略を考えているのか?

新生大塚家具の次の一手に注目したいと思います。

 

 

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