たとえば、もしも、今回のこの原稿を先方校正に出したら、確実に掲載を拒否される。 拒否されなくても、10回くらいは校正がかかり、元原稿はあとかたもなくなってしまうだろう。
実際、僕自身も別の媒体のいくつかでそのような経験を何度かしている。
具体的に彼らがどういうことにこだわるのかを説明すると、B-1グランプリで賞をとったのは、あくまでそれを提供した「町おこし団体」なのであり、「料理そのものではない」ということである。
例を挙げてみると「第5回に初出場で初優勝(この言葉もかなり嫌う)した『甲府鶏もつ煮』」と表現したらもうケチがつく。 これは
「第五回でゴールドグランプリを受賞した『甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊』が出品した『甲府鳥もつ煮』」
と書かなければ掲載に許可が出ない。 実にアホ臭い。 新聞記事にはならん。
文字の制約があるからね。 雑誌だって取り上げないねえ。
むろん、彼らのいい分もわかる。 だって、鳥もつ煮は甲府のものであって、甲府の人たちががんばってグランプリを取ったものであるから、近隣の石和や山梨市などが「山梨名物鳥もつ煮」とかで売り出されたら、甲府の町おこしにつながらないでしょう? ということだ。
でも、それで、周辺地域も含めた名物の盛り上がりの火種を消すことがあんたらの役割かね? というところに疑問は大いに残る。
実感としてあるが、確実にマスコミは面倒を避けて、こうした新名物を取り上げることをやめてしまっている。 「ふうん、そういうこというなら、こっちにも考えがあるよ」ということだと言い換えてもいい。 ま、報復だ。
実際、第1回に3位だった室蘭やきとり、第3回の優勝だった厚木シロコロホルモン(いずれも受賞者は提供団体だが)は、現在は考えの違いからか、団体から脱退してしまっている。 さもありなん、という気がする。
おっと、上州太田焼きそばの話をしようと思っていたのだった。
だが、富士宮の話がちょっと長くなってしまい、この先の話もさらに長い。
よって、太田の焼きそばに関しては次号で語ってみたい。
極論すると、日本三大焼きそばの一つ「上州太田の焼きそば」は、何を隠そう他ならぬこの僕がお膳立てをした一人(本人は中心人物だと思っているけど)なのである。 僕がいなければ、現在の太田の焼きそばは世に知られていない。
本当なら、岩崎屋さんなどは僕に足を向けて寝られないはず(笑)。
でも、諸般の事情があって、僕の名前は太田の焼きそばの歴史には残っていない。 少し寂しいので、次号で、チョびっと自慢をしたい。
そこからは、一介のB級グルメが日本を代表する名物となって、地元の観光に大きく寄与するようになるまでの推移の模様が見て取れると思う。
どうぞお楽しみに(こちらは楽しみにしていただいていいと思います)。
『『温泉失格』著者がホンネを明かす~飯塚玲児の“一湯”両断!』より一部抜粋
著者/飯塚玲児
温泉業界にはびこる「源泉かけ流し偏重主義」に疑問を投げかけた『温泉失格』の著者が、旅業界の裏話や温泉にまつわる問題点、本当に信用していい名湯名宿ガイド、プロならではの旅行術などを大公開!
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