なぜ、松下幸之助は「運が悪い」と答えた人間を不採用にしたのか

2016.06.22
by yomeronpou
 

少し話が回りくどくなるのですが、お付き合い下さい。人には生まれ持って自尊心があり、傷つきたくないがために失敗した場合にも「自分の能力が劣るのだ」と思いたくはありません。だからといって、能力を高めるための辛い努力もしたがりません。その時に役立つ考え方が「運が悪いから仕方ないのだ」というものです。

人の心の「摩訶不思議さ」は、自分を防衛するために無意識で「ごまかし」もできるし自分を信じて不可能を可能にもしてしまいます。「運が良い」と思える人は、失敗したり思い通りに行かなかったりした場合でも見方を変えたり更なる努力を傾けてチャレンジすることができます。この人が、成果をもたらすことができて貢献できる人と言えます。

成功する経営者には2つの要件と3つの要素があるようです。2つの要件とは「上昇志向」「自己効用感」であり、3つの要素とは「勇気」「価値観」「素直さ」です。洋の東西を問わず、偉大な経営者はこの2つの要件と3つの要素を自身の生い立ちのなかで「知恵ある悟り」でもって獲得しています。

自己効用感」とは聞きなれない言葉なので、解説します。自己効用感とは、自身が目標を達成する能力があるとする確信」です。この確信は、不運であると感じていたことや困難であると感じる場面において自身の「知恵」や「勇気」を持って克服した時に生まれるものです。多くの成功する経営者には「自己効用感」を持つに至る経緯があります。

京セラの稲盛さんが「自己効用感」を持ったのは、13歳で「おじ」と同じ肺浸潤で病床にふせっていた時で、たまたま隣家の女性に勧められて谷口雅春の『生命の実相』を読むことがありました。そこ書かれていたのは「心のあり方」が現象として現れるという考え方で、このことに衝撃を受けるとともにいつしか病も癒えてゆきました。

TSUTAYA社長の増田宗昭さんにも興味深いエピソードがあります。幼いころ自動車事故に遭い顔に傷を負い、また甘えん坊であったので「いじめ」に遭うことになりました。それが、父親の事業の失敗や母親の頑張りを契機として自分の意思でレスリング部に入りいじめを克服して境遇を一新させました。

一見些細な少年期の出来事のようですが「自身の意志力で困難を克服できた体験は名経営者として成長するための拠り所ともなり得ます。

image by: Lucian Milasan / Shutterstock.com

 

戦略経営の「よもやま話」
著者/浅井良一
戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。
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