EU離脱でイギリスはどうなる?
イギリスのEU離脱の理由が「理解できるもの」であったとしても、離脱の悪影響を避けることはできません。たとえば、英通貨ポンドが激安になっている(ポンドは6月24日、対ドルで31年ぶりの安値をつけた。)
経済面で長期的に最大の問題と思われるのは、欧州一の金融センター・シティーの没落でしょう。「英国はどんな国ですか?」と聞かれれば、多くの人が「金融の国です」と答えます。実際、金融関連ビジネスは、イギリスGDPの約1割を占めている。現在、アメリカやアジアの多くの金融機関が欧州の拠点をシティーに置き、そこから欧州のビジネス全体を指揮している。
しかし、英国がEUから離脱すれば、外国の金融機関は、欧州の主要拠点をシティーからドイツ・フランクフルトなどに移すようになるでしょう(日経新聞6月25日付は、三井住友銀行、損害保険ジャパン、日本興亜などが、早速「英国外で新たに欧州統括の現地法人を立ち上げる検討に入る」と報じていました)。
外交面での打撃も避けられないでしょう。アメリカと「特別な関係にある」と言われるイギリスは、常にアメリカとEUの「仲介役」を行ってきました。アメリカは、イギリスを通し、EUの政策に影響を及ぼしてきた。しかし、イギリスがEUを離脱すれば、同国はEUへの影響力を失うでしょう。
では、アメリカはどうやってEUへの影響力を確保するのでしょうか? もちろん、EU最強国家ドイツやフランスと直接対話、交渉を行うようになるでしょう。イギリスは外され、国際的地位は大きく下がります。
さらに、スコットランドがイギリスから独立する可能性が強まっています。スコットランドは、2014年の住民投票で、独立を否決しました。しかし、6月25日、(イギリスEU離脱の決定をうけ)スコットランド自治政府は、「独立の是非を問う、2度目の住民投票の準備をはじめる」と発表しました。
まとめるとEU離脱を決めたイギリスは、
- 欧州一の「金融センター」の地位を失う
- アメリカと欧州の仲介役という国際的地位を失う
- スコットランドの独立で、国家分裂する可能性が高まっている
と、暗い未来が待ち受けている。
とはいえ、肯定的な点がないわけではありません。イギリスは、「自国のことは自国で決める」ことができるようになる。これが、「イギリス人は主権を取り戻した」とトランプさんが評価した意味です。