英国のプライドが世界を狂わす。EUというドイツ第4帝国からの独立

 

イギリスを直撃したグローバル化の「ダークサイド」

EUは現在28か国。とはいえ、大昔からそうだったわけではありません。EUの前身ECは豊かな西欧諸国の集まりだったのです。

ところが、1991年にソ連が崩壊してから事情が変わってきました。それまでソ連の(事実上)支配下にあった貧しい東欧や、あらたに誕生したこれも貧しい旧ソ連諸国をどうする? という問題が浮上してきた。欧州統合を推進するフランスやドイツは、「EUに東欧旧ソ連諸国を加えていけばEUはアメリカを超えることができる!」と野望を抱いた。そして、実際そうしたのです。04年、EU加盟国は、一気に10か国増えました。主に、かつてソ連の(事実上)支配下にあった東欧諸国、そしてソ連の一部だったバルト三国。

貧しい東欧諸国の人たち。「あなたたちは好きなところで仕事しなさい」といわれたら、どこに行きますか?そう、豊かで給料の高いイギリスを含む西欧に行くにきまっています。そして、東欧諸国の人々は、豊かな西欧への移動をはじめたのです。

2015年、イギリスには33万人の移民がやってきたそうです。イギリスの人口は、日本のだいたい半分程度。だから、日本の感覚でいえば、「年間66万人移民が入ってきた」という感じ。

そして、彼らは、入ってきて仕事をする。労働市場に年間33万人も新たな労働力が供給されれば、当然、もとからイギリスに住んでた人たちの賃金が下がっていきます

「移民のせいで、職を奪われた!」
「移民のせいで、給料が下がった!」

普通の国なら、「じゃあ、移民の流入を制限すればいいじゃん」ということになる。しかし、EU加盟国のイギリスには、それができないのですね。「人の移動の自由EUの大事な原則の一つですから。これが、

「グローバル化のダークサイド」
「主権を制限されている」(それで、移民問題を自国で解決できない)

例です。イギリス国民の半分強は、

「主権を制限されていること」
「移民問題」

などが主因で、「離脱を支持したのですね。

EU=ドイツ帝国という現実

「世界の国=すべて平等」と言われています。国連だって、そういう建前で運営されている。

しかし、本音をいえば、すべての国が平等なわけではありません。たとえば、国連で強制力をともなう決定は、国連総会ではなく、安保理でされる。安保理には、常任理事国(=アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国)がいて、彼らは(非常に不平等な)「拒否権という特権」をもっている。

EUはどうでしょうか? すべての国が平等という建前ですが、域内最大の経済力をもつドイツが圧倒的に強い。それで、予言者エマニュエル・ドットさんなどは、「EU=ドイツ帝国である!」とよく言っています。

ところで、イギリスにとってドイツは、「第1次、第2次大戦でぶちのめした国」です。その敗戦国が、ちゃっかり欧州一のパワーをもち、いつの間にか28か国の実質支配者になっている。元覇権国家で戦勝国のイギリスには、それが我慢できないのですね。

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