百貨店は、もはや「過去の遺物」。激化するアパレル生き残り戦争の現状

 

グローバルSPAは成長を続ける

ユニクロ、無印良品、H&M、ZARA等のグローバルSPAは成長を続けるだろう。

百貨店アパレル、量販店アパレルは、問屋業態であり、自社でショップをコントロールする能力が欠如している。問屋業態を維持しながら、成長することは困難である。

グローバルSPAは小売業であり、世界で最も安く生産できるメーカーから商品を調達している。

今後は、店舗販売の売上比率を下げネット販売を増やすに違いない。店舗の売上を増やそうとすると、経費倒れになりかねないからだ。

ユニクロは、低価格戦略への回帰を打ち出したが、一方では,クリストフ・ルメール氏との取り組みを強化した。ユニクロパリR&Dセンターのアーティスティックディレクターにクリストフ・ルメール氏を起用し、2016年秋冬から新ライン「Uniqlo U」の販売を発表している。

これは、苦戦している欧米市場での巻き返しだけでなく、日本市場のアッパーゾーンに向けた戦略とも言えるだろう。

ユニクロはテキスタイルや縫製だけの差別化では、価格を上げることはできないと実感したに違いない。そして、ジル・サンダー氏との「+J」の経験を生かし、再度、本格的にブランドビジネスに取り組んでいく決意を固めたのだろう。

残念ながら、大手百貨店アパレル企業は、こうした一流デザイナーとの本格的な協業を経験していない。勿論、一流デザイナーとの取り組みは経験しているが、あくまでブランドライセンスであり、自社ブランドのアーティスティック・ディレクターとして契約するという形態ではないのだ。

この契約ができるということは、今後、様々なデザイナーと協業できるということである。ユニクロにその意志があるか否かは分からないが、グローバルなブランドビジネスの入口に立っているのは確かだ。

無印良品も国内デザイナーと契約しているが、あくまで業務委託契約であり、デザイナー名を公表していない。この姿勢は、ブランドビジネス的なアプローチを否定しているということでもある。無印良品というブランドが重要であり、デザイナービジネスには参入しないという意志の現れだろう。

いずれにせよ、今後、ファッションシーンで影響力を増すのは、国内外に直営店を持ち、グローバルソーシングを行っているグローバルSPA企業であり、百貨店アパレルではないのだ。

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