涙が出るほど美しい。京都が世界に誇る「桂離宮」を知っていますか?

 

見どころ4 月波楼(げっぱろう)

月波楼は古書院の並びにあり観月のための茶亭です。「歌月」の額は霊元上皇の宸筆(しんぴつ)と伝わります。小高い場所に建てられているので、正面の池に映る月の影を楽しむ為に作られたと伝わります。北側の窓からは紅葉を楽しむことが出来、葉が落ちるとソテツが見えるように植栽の配置にもこだわっています。まさに秋から冬へと移り変わる景色を楽しむことが出来るおもてなしを考えた造園の技が光ります。

見どころ5 キリシタン灯籠

八条宮智仁親王の妃である常照院はキリシタン大名宮津藩主京極高知でした。そのため、桂離宮にはキリシタン灯籠(織部灯籠)が7つあります。キリシタン灯籠にはマリア像のモチーフがあるのが特徴です。全てを確認することは出来ませんでしたが、形の違う灯籠を一つ一つ観察しながら苑路を周れたのも楽しいものでした。

桂離宮は、八条宮家智仁(夫人は、キリシタン大名の娘)、智忠としただ親王父子によって創建されたものです。智仁親王は、後陽成天皇の弟で兄から皇位を譲られるところだったが、豊臣秀吉に子がなかったので一時秀吉の養子になっていました。そのため江戸時代、天皇に推薦された時は徳川幕府に取り消され、権力の座から遠ざけられたと伝えられています。智仁親王が兄の後陽成天皇に宣教師を紹介したことがきっかけで、桂離宮には多くの西欧手法が用いられるようになりました。このような手法が積極的に取り入れられていることを考えると当時の作庭家小堀遠州が関わった可能性が高いといわれています。

先細りの空間を造り遠近感を強調するパースペクティブの技法などは小堀遠州の得意とする手法です。極端に細長い空間を造り遠近感を強調するヴィスタの技法なども西洋から取り入れた空間技法で遠州の名刺替わりといった感じです。この他にも人間にとって最も美しいと感じる黄金比率なども取り入れられています。

ソテツの植栽、青白チェック模様の襖、ビロードの腰張り、7本のキリシタン灯籠、十字型の手水鉢なども特徴的です。これら西欧文化の影響が随所に見られるのも大きな魅力です。それでいて延段(のべだん)の敷石の模様などは書道や華道茶道などに通じる「真」「草」「行」の美意識を取り入れています(真・草・行の三体は、「真」は正格、「草」はくずした風雅の体、「行」はその中間)。

桂離宮の庭園や建築物を観賞するとおびただしい数の技法や工夫がされているのが分かります。それらは実用性などとは程遠いものが多く、人を喜ばせるおもてなしの気遣いが感じられるものばかりです。人の心を想うことがいかに大切にされていたかということが過去の遺産から感じ取ることが出来ました。今必要なこと、将来必要とされることのヒントは過去を知ることでしか探ることは出来ません。皆さんも是非、いつか桂離宮をそして京都を訪れてそのようなものを探してみて下さい。

image by: Shutterstock

 

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