責任の所在はどこに
【東京】は1面トップに加えて3面にも記事。見出しを並べる。
- 都 08年に地下空間案
- 豊洲市場 盛り土提言受けた直後
- 専門家会議に諮らず
- 専門家会議 再開へ
- 土壌汚染対策の検証依頼
uttiiの眼
「専門家会議」と「技術会議」についての問題。《東京》は全く違う指摘をしている。
「都が2008年には工法を検討する有識者の会議で地下空間を設ける考えを示していたことが、都への取材で分かった」という。この会議は「技術会議」のこと。都は、「専門家会議」から盛り土の提言を受けた直後でありながら、安全性など検証しないまま、11年には地下空間の設置を盛り込んだ設計図面を作成していたという。
これを見る限り、都には「専門家会議」の提言など、最初から従うつもりがなかったかのようだ。そして、地下空間に関して、「技術会議」の委員の面々は、都庁の担当者たちと「同罪」ということになる。
だが、そもそも今回の事態を受けて行われた都側の説明は正しいのだろうか。《東京》はその点を、取材を通して明らかにしようと、技術会議の委員に直接取材している。
都側は、「技術会議」に地下空間を設けることを前提とした、駐車場利用案などを出したといい、議事録にもその記載があるようだが、実際に委員だった川田誠一産業技術大学院大学学長は、「実は空洞だと聞き、ビックリした」と話し、まだ長谷川猛・都環境公社非常勤理事は「地下空間の利用なんて都は会議で詳しく言っていない。技術会議で承認していないと思う」と反論する。
議事録が会議の実態を反映しているのかどうかを含め、詳しい検証が必要のようだ。いったい、誰の言っていることが事実に最も近いのか。
あとがき
以上、いかがでしたでしょうか。
世の中には色々と不安の材料がありますが、築地の移転先とされている豊洲新市場にまつわる不安は得体が知れません。まさか、そんなことが起こっていたとは…と溜息をつきたくなるような実状です。
地下を汚染しているベンゼンも嫌ですが、建物という建物が空洞の地下空間の上に建っている様は、「砂上の楼閣」ならぬ「空中楼閣」のよう。一種のピロティー構造であり、あの阪神淡路大震災で、ピロティー構造を持った建物の多くが膝をつくように倒壊してしまったことも思い出されます。
小池知事はダメージコントロールにとりあえずは成功し、あとはさらなる求心力を掌中にするため、次々と手を打つことでしょう。その政治的主張の当否はともかく、移転延期判断の速さ、今回の事態発覚を受けての緊急記者会見と、その運動神経の良さは遺憾なく発揮されているようです。もっとも、問題はその先。東京五輪開催への悪影響というところにも及んでいるのですが…。
image by: 東京都庁
『uttiiの電子版ウォッチ』2016/9/13号より一部抜粋
著者/内田誠(ジャーナリスト)
朝日、読売、毎日、東京の各紙朝刊(電子版)を比較し、一面を中心に隠されたラインを読み解きます。月曜日から金曜日までは可能な限り早く、土曜日は夜までにその週のまとめをお届け。これさえ読んでおけば「偏向報道」に惑わされずに済みます。
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