気づかぬは安倍総理のみ。元公安が明かす金正恩「正気」の素顔

 

しかし、対話など成り立つのか?

そうは言っても、あの何を考えているか分からない金正恩との対話など成立するはずがないというのが米国でも日本でも常識だが、必ずしもそうではない。米ジョンズ・ホプキンス大学の米朝関係研究所の上級特別研究員ジョエル・S・ウィットは9月14日付ニューヨーク・タイムズへの寄稿「いかにして北朝鮮を止めるか」で、こう述べている。

米国では、北朝鮮と交渉するなど時間の無駄だと考える人が多いが、平壌が対話に関心を持っていることを示す兆候がある。7月6日に北政府は、米国との非核化交渉を求める声明を発表し、それには特別に、金正恩がこのイニシアティブを支持していることが付言されていた……。

この声明は、米国が即座に拒否し(と言うか完全に無視し)、その数時間後に逆に金正恩自身を制裁対象とする新たな経済制裁を発表、北が一気に態度を硬化させたために、話題にもならなかったが、要するに、米国の方が先に北に対する核包囲体制を解除すれば北も相応の措置をとり、朝鮮半島の非核化に道が開かれるというもので、従来からの北の主張の繰り返しに過ぎない。とは言え、たぶん金正恩体制になって初めて北朝鮮が非核化のための交渉の可能性を正式表明したことは、意味のないことではなかった。ウィット教授はさらにこう提案する。

北朝鮮を対話に引き入れるには、米国も彼らの安保上の関心事に応える必要がある。短期的には、[北が忌み嫌っている]米韓合同軍事演習を一時的に中止するか変更すること、長期的には、休戦協定を平和協定に置き換えることである。

北朝鮮が非核化交渉に関心を持つ理由の1つは経済である。金は核兵器(への軍事資源の集中)は経済の改善という目標により力を注ぐための条件になると考えているように見える。

もちろん、彼らのこうした(7・6などの)声明を額面通りに受け取るほどナイーブな者はいない。しかし政府間で対話する以外に真意を知る方法はない……。

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