大戸屋「お家騒動」の調査報告書が、まるで昼ドラのような骨肉の争い

 

しかし、両者はまたも決裂します。合意書には「2年後に復帰」とあるものの、よく読むとそれらのくだりは単なる努力目標に過ぎないと智仁氏は受け止めました。そのため、合意書は破棄されました。その後、両者は互いに代理人弁護士を立てるなど、直接対話ができないほど関係がこじれています

調査報告書や報道を確認する限り、会社側と創業家の双方に問題があります。さらに、メインバンクの三菱信託の介入が話を複雑にしています。三菱信託は智仁氏が社長に相応しいとは思っていなかったのでしょう。取締役時の智仁氏の年齢は26歳です。経験を積んでからの智仁氏の社長就任、または経験不足を理由とした排除を狙っていたと思われます。「お骨事件」が象徴するように、智仁氏が母親の三枝子氏に頼っている姿を見ると、上場企業の社長としては物足りないと思われても不思議はありません。

会社側の対応も後手に回っていました。功労金は経営上大きな負担です。おそらく三菱信託が待ったをかけたと思われますが、一度話を俎上に載せたのであれば、迅速に支払うべきだったといえるでしょう。契約金額が12億円超の保険金を原資とすれば大きな負担ではないはずです。創業家への配慮も足りませんでした。海外での修行といえば聞こえはいいのですが、排除のための左遷と捉えられても不思議はありません

大戸屋のお家騒動は事業承継の難しさを浮き彫りにしました。公開の上場会社とはいえ、創業者が家族に事業を承継させたいと思うのは当然の心理です。一方で、会社の経営陣は創業者の意思を尊重しつつ、株主やメインバンクといったステークホルダーに配慮を示すことも当然に必要です。両者の利害は必ずしも全面的に一致しません。ただ、完全な利害の一致は無理にしても早い段階で両者が納得できる妥協ができたのではないかと思えてなりません。コミュニケーション不足の感が否めません。

大戸屋は消費者不在の論理をかざしています。お家騒動が勃発した企業のご飯を好んで食べたいと思う人はいないでしょう。消費者のそうした思いを無視した形でお家騒動を起こしたことは、会社側と創業家の双方に問題があるといえます。はたして、不味い飯を食わされている消費者の気持ちを考えているのでしょうか。早期の解決を願ってやみません。

image by: 大戸屋公式Facebook

 

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著者/佐藤昌司
東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。
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