煽るママ友、焦る母親…「中学受験はさせるべきか」という高い壁

2016.11.01
by まぐまぐ編集部
 

筑駒だ灘だ桜蔭だ開成だと有名校が名を連ねる①は、いかにも厳しい世界のように見えるだろう。確かに頂上は本当に甘くない戦いで、子どもには酷に感じることもある。しかし、私自身そこを勝ち抜く子たちをたくさん育ててきたが、基本的には主体的に充実感を感じて受験勉強に立ち向かっている子ばかりで、試験直前などは神々しいくらいの美しさである。

受験校も非常にたくさん存在しているし、それぞれの実力なり誇りを持って入学している。一番の特徴は、「こういう訓練をしていけば解ける」と見えている問題が大半なので、塾に行く意味もあるし、「努力できる子」ならば見通しが立つということである。

やっかいなのは②だ。ある意味では21世紀型学力を先取りするとも言えるのだが、受験用の知識やノウハウというよりは、日常生活の中での観察眼や問題意識や好奇心を問う、科目横断型問題が主で、いわば「普段の力」を問うものが中心である。

例えば「レインボーブリッジの入り口はなぜループ構造になっているのか」ということに、答えなければならない。個人的には大好きだし、大いにこの方向性の問題を追求してもらいたいが、大変なのは受験生である。倍率も高い上に、ここを訓練すればある力が確実につくというものが①に比べて見えにくい。だから、そもそも入りにくいよということを前提として、こういう素敵な問題群で本当の中身を育てるという意図を明確に持っているというような話ならば、そういう決断もありではあろう。

③については、大器晩成系には向いている。例えば早生まれで体の発育もみんなに比べると遅いというような子が典型だが、落ち着かない・幼児性が強い・計画性がない、などの保護者にとっては「困った子」でも、中3ともなると確実にみんな大人になる。なまじ促成栽培の「やらされ勉強」をやってないので、大らかさが特徴的で、さあ入試勉強となったときに、主体的に自分事として集中できる。

正直、首都圏で中高一貫私立進学校に入った場合と、公立中から県立一番校などに回った場合では、大学合格の年度だけは一年くらいは差がつくことは覚悟した方がよいが、「30歳になったとき、その差が何であろう」そういう長期的な視点があれば、落ち着いて5・6年生を英語の勉強や大好きなスポーツやお稽古事に打ち込み人間としての厚みを育てることもできる。

そういう総合的な視点で、選択してほしい

ある年度の小学生たちを思い出した。開成を始め中高一貫私立に行った子たちは、合格のときから中2くらいまでは一目置かれるような存在であったが、自分が高校入試を意識して集中して学びはじめそして高校に合格すると、それぞれお互いのことは忘れて生活している感じになる。そして、20歳になって集めてみると現役合格もいれば浪人もいるが、結局、地頭通りの大学で再会している。

いずれにせよ、エピソードとなる事例は無数に存在するが、「この子には絶対これという正解」はない。あるのは各家庭の方針と決断のみ。だから情報をたくさん集めたあとは、やるならやる、やらないならやらないで夫婦一致団結してブレずにいてほしい。そして、合格そのものではなく社会人になってからの活躍を想像しながら、家族で歩んでいってほしい。

image by: Shutterstock

 

高濱正伸著者/高濱正伸

花まる学習会代表。1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。

「情熱大陸」「カンブリア宮殿」「ソロモン流」など、数多くのメディアに紹介されて大反響。週刊ダイヤモンドの連載を始め、朝日新聞土曜版「be」や雑誌「AERA with Kids」などに多数登場している。2016年7月からニュース共有サービス「NewsPicks」のプロピッカー。

高濱正伸とスクールFCの達人講師陣による、他メディアには書けない記事にご期待ください。

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