カジノという名のギャンブルを成長戦略に据えるアジアの愚国

 

カジノはすでに乱立で過当競争時代に突入し、共食い共倒れが起きやすい状況になりつつある。

昨年12月12日の参議院内閣委員会で、鳥畑与一・静岡大学人文社会科学部教授は次のように参考人陳述をした。

アジアのカジノVIP市場が縮小局面のなか、周回遅れの日本が参入して中国富裕層を相手にシンガポールやマカオより高収益をあげられるのか。カジノは日本にしかないものでなく、世界中同じだ。米国アトランティックシティのカジノ産業は周辺州のカジノ合法化によって、12のカジノのうち5軒が廃業に追い込まれている。日本も同じ運命をたどる危険性が高い。

カジノは一般客より、圧倒的にVIP客からの稼ぎが多い。シンガポールやマカオが潤ったのは、中国人富裕層が主要顧客になっているからだ。VIPのなかには、マネーロンダリングや贈収賄の手段としてカジノを使う客も少なくないだろう。

ラスベガスはもちろん、ヨーロッパなどカジノの先進地に行き慣れた世界の富裕層が、日本にカジノができたからといって関心を持つだろうか

すでにSNSなどを通じて外国人が発見した日本固有の魅力が世界に発信され、通常の観光地ではなく、日本人には意外な場所が外国人観光客を集めている。

こうした動きの邪魔をしない範囲で、政府は世界に向けた情報発信を積極的に行うべきではないか。たとえば、「わび・さび」という日本独特の美意識を、外国人にわかりやすく伝える努力をどこまでしているだろうか。

筆者はIR議連がカジノを観光振興の目玉として掲げていることに違和感をおぼえる。はっきりいえば、理由に正当性を持たすためのこじつけで、背後に利権構造がかくれているのではないかと疑っている。

これだけ観光資源に恵まれている国はざらにはない。世界でトップ10に入るといわれている。これまでは、日本人だけで経済が成り立ってきたからこそ、観光戦略がフランスやイタリアなどにくらべ大きく遅れをとっているだけのことだ。

カジノ解禁については、かなり前からそれを望む声があったようだが、明確なかたちで出てきたのは、石原慎太郎が1999年の1期目の都知事選で「お台場カジノ構想」を打ち出してからだろう。

金になるならなんでもやるよ。カジノをお台場につくるのもいい。本気だよ。
(石原都知事99年5月26日、毎日新聞の取材に)

その後、石原はお台場カジノ構想をあきらめたが、東京五輪の開催が決定するや、IR議連が活発に動き始めた。埋め立ててつくった広大な遊休地に万博やIRを誘致しようと意気込む大阪府の松井知事も、親しい菅官房長官にカジノ解禁への法整備を直訴した。

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