揺れるニッポンの屋台骨。中小企業の「2017年問題」が深刻

 

戦後の創業、起業家精神を取り戻そう

この流れを打開するには、やはり経済、とくに中小・零細企業が活性化するしかないだろう。戦後の日本は敗戦の廃墟の中から企業が立ち上がって今日の礎を築いたのだ。ソニー、パナソニック(松下電器)、シャープといった家電メーカーやトヨタ、ホンダ、日産などの自動車産業も僅かの人数でソケットや電球、オートバイなどの製作からスタートしてきたのだ。

その家電や自動車、機械業界などが輸出で日本経済を引っ張り、60年代後半から一億総中流時代となって家電製品や車、住宅などの消費ブームを起こし高度成長に繋げてきたといえる。

その間、日本企業はアメリカ、ヨーロッパなどの企業を次々と追いつめ、日米経済摩擦、日欧摩擦などを引き起こし、金融や産業のルールを変えられてきた。当時はまだ新興国が育っていなかったから日本の一人舞台といってもよく、「働き方」ならぬ日本人の働き過ぎも摩擦問題のテーマになったほどだ。

戦争直後の日本が、多くの企業の創業時代だとすれば、いま日本に求められているのは第二の創業だろう。アメリカは古い産業に代わってITやバイオ、宇宙、医薬などの産業が次々と立ち上がり、アップル、グーグル等々の世界企業を生んできている。日本の技術水準人材感性工夫と発想などを起業化に結び付け売り方を工夫すれば日本の第二の創業時代を呼び込むことも夢ではないはずだ。

リストラやM&A(買収)などで企業規模を大きくすることより、中堅でもピカリと光る企業群を数多く輩出すれば、若い人々の夢にもつながろう。実は日本にもそうした企業は数多くあるのに、なぜかあまり注目されていないのは残念なことだ。

経済産業省では、日本のはばたく中小・零細企業の名前や実例を特集することがあるが、2016年5月に「はばたく中小企業・小規模事業者300社 ※4」と「はばたく商店街30選」を選定しているのでこちらも参考になるだろう。

参照データ

※1:都道府県・大都市別企業数、常用雇用者数、従業者数(民営、非一次産業、2014年)
※2:2015年「休廃業・解散企業」動向調査
※3:人口動態について
※4:「はばたく中小企業・小規模事業者300社」及び「はばたく商店街30選」を選定しました

(Japan In-depth 2017年1月21日)

image by: Shutterstock.com

 

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ジャーナリスト。1942年生。慶応大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社。大蔵省、日銀、財界、ワシントン特派員等を経て1987年からフリー。TBSテレビ「ブロードキャスター」「NEWS23」「朝ズバッ!」等のコメンテーター、BS-TBS「グローバル・ナビフロント」のキャスターを約15年務め、TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」に27年間出演。現在は、TBSラジオ「嶌信彦 人生百景『志の人たち』」出演。近著にウズベキスタン抑留者のナボイ劇場建設秘話を描いたノンフィクション「伝説となった日本兵捕虜-ソ連四大劇場を建てた男たち-」を角川書店より発売。著書多数。NPO「日本ニュース時事能力検定協会」理事、NPO「日本ウズベキスタン協会」 会長。先進国サミットの取材は約30回に及ぶ。

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【著者】 嶌信彦 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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