褒めて伸ばすか、叱責か。人材育成や子育てが二者択一ではない訳

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ほめて育てるか、厳しく育てるかという議論は、育児だけではなくビジネス等の人材育成の場でも頻出しますよね。そもそもどちらが正しいのでしょうか。こんな究極的な疑問に、無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』の著者で現役弁護士の谷原誠さんが出した答えは?

ほめるか、叱るか

こんにちは。

弁護士の谷原誠です。

人を育てる方法は、ビジネスにおいて大きな課題の一つ。大きく分けて「ほめて育てた方が良い」「厳しく育てた方が良い」という二つの相反する考えがあります。ビジネスだけではなく、育児本などでもよく聞かれる正反対の論調です。

近年は「ほめて育てる」といった本が流行する傾向があるようですが、「ほめて伸ばすのは間違い」といった内容の、反対の立場からの論考もよく読むようになった気がします。この「対立」はなぜ起こるのでしょうか。

「ほめる」派の人の言い分はこうです。人に厳しく接すると、相手は萎縮して自分の力を発揮することができない。叱られることを恐れ、自分の意志で成長しようとしなくなる。よいところをほめ、伸ばすことで結果的に良い人材になる、というもの。

一方「厳しく」派の人の考え方は、人はほめられるとだらけてしまい、ミスをしやすくなる。そもそも基本的なスキルができあがっていないときにむやみにほめれば、増長し、勘違いするだけで成長が妨げられる、といったところでしょう。

それぞれに納得できるところはありますが、どちらの方が正しいのでしょうか。と、問いかけてみたものの、私はなにごとも二者択一の考え方が好きではありません。二者択一の問いかけを見ると、問題の立て方自体を疑ってかかってしまいます。「どちらが良いか」と言われると「両方良い」と言いたくなる性質です。

 

つまらない答えかもしれませんが、厳しくすべき場面で厳しくほめるべき場面ではほめるのが正しいのだと思います。そして本当の問題は、ほめることと厳しくすること、どのようなときに使い分ければよいのか、ということなのだと思います。

上に説明したように、ほめるのは長所を伸ばすため。厳しくするのは、ルールを守らせたりミスを防いだりするためです。目的が異なりますので、ほめることと厳しくすることの双方に矛盾はないはずです。

また、矛盾しないだけではなく、この双方には、互いのデメリットを減殺する作用が働きます。長所をほめることで、厳しくすることによる萎縮する効果がやわらぎ、いざというときに厳しくすることで、ほめることにより増長するというマイナスは減殺されることになります。

実は、「厳しく育てる」派の人の中には、元々ほめるのが苦手で、どうほめてよいかわからない人がいます。また「ほめて育てる」派の人は、部下を叱れない、あるいは厳しく接して嫌われることを極度に恐れている人がいます。その現状を正当化するための論理として、二者択一のどちらかを正しいとしている部分もあるのかもしれません。

何をしてもほめられるようなコミュニケーションでは、ほめられた方も何が良かったのかわからず、何も学べません。逆に根拠なく叱られること、まったく予測がつかないときに叱られると萎縮します。

適切な場面で使い分けることで互いに補完し合う関係にあると言ってよいでしょう。それぞれの機能を考えながら、メリットを最大限にしデメリットを減殺する指導を行うのが重要なのではないでしょうか。

「まず相手をほめておくのは、歯科医がまず局部麻酔をするのによく似ている。もちろん、あとでガリガリやられるが、麻酔はその痛みを消してくれる」(デール・カーネギー)

今回は、ここまでです。

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【著者】 谷原誠 【発行周期】 不定期

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