子連れ出勤もOK~注目の「ギフト」企業
「働きたい」と思える会社はSCSKのような大企業だけじゃない。東京・目黒区にあるソウ・エクスペリエンスは従業員40人のベンチャー企業だ。
この会社の商品はギフト。しかしギフトといってもモノではない。「体験」に特化した贈り物だ。1万円コースのカタログを見てみると、アウトドアスポーツに藍染めや織物など、もらった人は好きな体験を選ぶことができる。他に、エステやカフェだけを集めたカタログもあれば、ヘリのチャーター券53万円というのもある。
ソウ・エクスペリエンスの創業は2005年。販売数も右肩上がりに伸び続けている。このユニークなビジネスを作り上げた社長の西村琢は、急拡大中にもかかわらず、これまで人材確保に困ったことはないという。
「いろいろな働き方をOKにしているので、『あそこだったら働いてみたい』と思ってくれる人は多いんじゃないかと手応えはあります」(西村)
例えばこの会社は子連れ出勤がOK。社員・パートにかかわらず、子どもを連れてきていい。子どもの面倒を見ながら働けるし、保育所の費用もかからない。
2013年から始まった子連れ出勤。トラブルが起きないようさまざまな工夫もある。例えば階段を上がった部屋は子供禁制。集中して仕事がしたい時や、大事な電話をする時に使う。
もちろん働くママは大助かり。ある女性社員は、「子ども産んだ後に、なかなか保育園に入れなくて。働きたかったですし、子どもと1日中、家にいるのはかなり大変。外に出るきっかけができて良かったです」と言う。
仕事も育児も大人も子どももごちゃまぜ。それは会社にとってもメリットがあるという。
「子どもがどういうところに興味を持つとか、なんでそこに興味を持ったとか、観察していると気付きをもらえます」(西村)
一方、営業担当の畠田那穂はある働き方ができるために転職してきた。畠田は嘉悦大学でフードビジネスゼミの講師もしている。ソウ・エクスペリエンスでは副業OKなのだ。
「全然、違う仕事で大変じゃないか、忙しいんじゃないかと言われるのですが、両方とも好きなことなので」(畠田)
畠田はフードビジネスのノウハウを本業にも生かし、オシャレなカフェでのティータイムや泊まれる高級レストランの体験など、年間50本もの体験ギフトを実現させた。
「副業で出会う人、湧いてくるインスピレーションも無視できないと思います。そこで出会う人が違う形でソウ・エクスペリエンスの仕事に戻ってくることもいっぱいあるので、良いことだと思う」(西村)
~村上龍の編集後記~
「働き方」が、トピックスになっている。政府は「働き方改革実現会議」を発足させた。
信じられないような、長時間の残業で、心身を病む人、自殺者も出て、社会的な危機感が、生まれている。
今、残業は、生産性低下など、諸悪の根源のように言われているが、かつては常識であり、美徳でもあった。「残業」は、文化的な問題でもある。
「身を粉にして働き、自らを犠牲にして組織に尽くす」。いまだに美談だ。だから、残業を減らすのは、むずかしい。
重要なのは、忠誠心の利用・依存から抜け出し、「個別の信頼」を築くことかもしれない。
<出演者略歴>
中井戸信英(なかいど・のぶひで)1946年、奈良県生まれ。大阪大学大学院修了後、1971年、住友商事入社。副社長などを経て、2011年、SCSK社長就任。
西村琢(にしむら・たく)1981年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、2005年、ソウ・エクスペリエンス創業。
source:テレビ東京「カンブリア宮殿」