残業削減でブラック労働から大変身した大企業
過酷な残業が当たり前の情報システム企業で「働き方革命」が起きている。情報システム業界第5位のSCSK。従業員1万1千人、売上高3200億円の大企業だ。
システム推進担当の五月女雅一さん。金曜日の午後3時になると、早々と帰宅。この日は週1回の早帰りの日なのだ。夕食前に小学1年の次男の宿題を見る。数年前まで、とてもこんな時間は持てなかったという。以前の金曜は、土日に仕事を残さないよう決まって残業、帰宅はなんと午前2時。それが現在は6時半には一家団らんの夕食だ。
その変化に一番驚いたのは妻のさおりさんだった。「同じ会社とは思えない。今の言葉ではブラック企業。潰されちゃうんじゃないかなと思っていました」と言う。
さおりさんが見せてくれたのは3年前、夫の会社のトップから全社員に送られた一通の手紙だった。冒頭に「ご家族のみなさまへ」と書かれた手紙には、「一流企業となるためには、家庭生活を充実させることが大切です。職員の皆さんが健康であり続けるために、最大限の支援をします」とある。そこには健康を本気で考える経営者の覚悟が記されていた。
「こんな会社、あるのかなと思いました。健康な社員がいるからこその業績アップとの考え方を伝えていただき、いろいろな不安を取り払ってくれる手紙でした」(さおりさん)
残業削減を仕掛けたのがこの手紙の主、SCSK相談役の中井戸信英だった。「働き方改革」の先頭を走る、いま注目の経営者だ。
「従業員を犠牲にして、ブラック企業と言われて残業をめちゃくちゃやらせて、それで利益を出しても一流とは言わない。世間で、あの会社は立派だ、いい会社だ、自分の息子や娘も就職させたい、いい会社に勤めているらしいねと言われ、それでいて成果も出せる会社。そのためにはやっぱり“働き方”なんです」(中井戸)