残業減らせば残業代、子連れ出勤OK…「働き方改革」を始めた2社

 

「残業減らせば残業代」驚きの“働き方革命”大公開

中井戸の前職は住友商事の副社長。2009年に子会社の住商情報システム社長に就任。その後、同業のCSKと合併しSCSKをつくった。だが、社員を激励しようと社内を見て回ると、そこで衝撃的な働き方を目の当たりにする。

「残業の問題です。月50~80時間の人がいる。会社に寝泊りしている人がいる。それでまともな仕事ができるのか、そんなイメージを持った」

そこで中井戸が取り組んだのが残業半減運動だ。残業を減らすため、まず社員に残業しない日を申告させた。夕方、仕事を振ろうと思っても、「ノー残業」という札を出している人には振りにくい。さらに会議は立って。しかも原則1時間など、ダラダラ仕事を徹底的になくしていった。

極め付きは残業代の扱いだ。ある社員の賞与明細を見せてもらうと、残業を減らした分、「報奨金」として、ボーナス12万円上積みされていた。中井戸は、「残業を減らせば残業代を出すという前代未聞の策を打ち出したのだ。

中井戸改革の効果はてきめん。残業時間はみるみる減っていった。にもかかわらず、SCSKの営業利益は6期連続右肩上がりだ。

SCSKには他にもうらやましいことがいくつもある。その一つがマッサージルーム。国家資格を持ったマッサージ師が常駐している。20分500円からと格安だ。

一方、社員には毎日、会社が定める健康チェックが課されている。出社すると、まず万歩計を見て昨日一日歩いた歩数を入力する。さらに酒を飲んだか、歯を磨いたか、朝食は取ったかなど、会社が定める健康チェックについて答えていく。これは「健康わくわくマイレージ」という社員の健康管理システム。健康基準を満たしてポイントを貯めると、ボーナス時にその分の支給がある。

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従業員を大切にする~異端すぎるトップの信念

中井戸がこれほどまで社員の健康にこだわり、働き方改革を進める裏には、半世紀にわたる仕事人生で培った揺るぎない信念があった。

中井戸は1971年、総合商社大手の住友商事に入社する。時は高度成長の末期。商社マンといえば花形で忙しい仕事の代表格だった。しかしそんな中で、中井戸はひとり異彩を放っていた。

入社1年目。研修が終わったばかりの7月に、中井戸はいきなり一週間の夏休みをとった。すると休み明け、上司に呼び出された。「何を考えているんだ。新人のくせに一週間も休みを取るなんて生意気だ!」という上司の言葉に納得できず、みんなの前で「おかしいじゃないですか。決められた休みを取って何がいけないんですか」と、言い返した。

モーレツ社員というイメージが商社マンにありました僕はそういう考え方には馴染めなかったその代わりやるべきことは後ろ指をさされないようきちっとやる」(中井戸)

「接待にも行きませんでした。毎日のように定時に帰ってきました」(妻の恵美子さん)

働き方を考えるターニングポイントとなったのは、入社3年目のドイツへの赴任だ。

ある日、取引先のドイツのメーカーに「日本の優れた製品を紹介したい。明日の夜、時間はありますか?」と電話をすると、「ダメだ。夜は家族と過ごす時間だから残業はしない。夕方までに話をまとめられるか」という返事。決められた時間の中で高い成果を出すドイツ人と何かと波長が合った中井戸は、次々と大口契約を獲得した。

96年にはアメリカへ。ITという新たな産業が起きつつあったシリコンバレーで、若者たちの生き生きとした働きぶりを見て感銘を受けた。

彼らはすごく働くが残業で追いまくられるのとは違う働き方ですよね仕事はするがゆとりがある」(中井戸)

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