【北朝鮮】金正男氏暗殺の背景を新聞各紙はどう報じたか

 

正男氏の涙

【読売】は1面左肩に基本的な事実、2面に解説的な記事、7面国際面にも。見出しを並べてみる。

(1面)

  • 正男氏殺害 関与の女逮捕
  • 毒殺の見方 男女5人 行方追う

(2面)

  • 「命ごい」正男氏狙う
  • 「正恩氏の指示 不可欠」見方も
  • 韓国の情報機関分析
  • 父葬儀 参列できず■国民窮状に涙
  • 正男氏 流転の人生

(7面)

  • 読めぬ北 中国危機感
  • 金正男氏殺害
  • 「親中派」も処刑 関係悪化辞さず
  • なぜマレーシアで
  • 警護なしで行動/中国より警備緩く

uttiiの眼

2面記事には、暗殺の動機の中に、正恩氏の「偏執狂的な性格」(韓国・国家情報院)に加えて、金正日氏の長男として「金日成氏から続く正統な後継者」とみられていた正男氏への劣等感や、正恩氏の母が在日朝鮮人であることが出自上のマイナスであったことを付け加えている。

殺された正男氏の人となりについて書かれている内容は、「中国、マカオ、マレーシアなどに妻や内縁の妻を持つ派手な女性関係」や「初対面の記者とも会話を交わす飾り気のない性格」など。さらに、(おそらくは日本の)情報当局者で2013年にホテルのバーで正男氏と酒を飲んだことのある人物は、正男氏が「北朝鮮国民が苦しみにあえいでいる現状を嘆き私の目の前で涙を流した」と話しているという。

正男氏と中国との関わりについて、《読売》は《朝日》よりも大きな問題として捉えているように見える。

7面記事に次のような記述。「中国が中朝関係の悪化を見越し正恩氏の後継候補として保護下に置いていた正男氏が排除されたとの見方が支配的だ」と。そもそも張成沢氏が処刑された頃、北朝鮮の中枢では、「張氏が「政変」を起こして正男氏を指導者に担ぎ上げようとした」という疑惑が高まっていたのだといい、したがって、今回の暗殺劇は「張氏処刑の延長線上にある」(中国の北朝鮮専門家)と見ているという。さらに、「習政権に近い関係者」の話として、北朝鮮は中国にとって予測しがたいリスクの1つであり、「正恩氏は北朝鮮軍の一部幹部の傀儡となっているとの評価に傾きつつあり、習氏が関係部門に「実権を握る人物」の分析を急がせている」という情報もあるのだという。今回の事件は、粛清で弱体化した中枢の組織同士が忠誠競争に走り、16日の金正日総書記誕生日を前に独断で殺害を強行したとの情報もあると。

どこまでが本当のことか分からないが、仮に、正恩氏が軍の傀儡なのだとしたら、「自らを脅かす可能性が少しでもある人間を「執拗に排除」しようとする正恩氏の性格」とか、「偏執狂的な性格」というような要素は吹っ飛んでしまうか、あるいは精々、副次的な要因に止まるということになるだろう。

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