広辞苑には、「ずくがない--ものうい、おっくうである、信濃方言として現行」と出ていた。用法として、旧観帳「わしはナア酔って--からナア」と紹介されているが、昔は全国的に使われていて、信州にだけ残ったのだろうか。もしそうだとしたら、信州人の特質がそうさせたのだろうか。
さて、「ずくがない」、「ずくを惜しむ」など、あまり歓迎されざる状況を言っているのだが、「ずく」を惜しむ精神が、技術や文化を進歩させてきたともいえるのではないかとも考える。ずくを惜しまず、こまめにやっていたのでは十年一日変化がない。何か楽にやる方法はないかという気持ちが、創造性に繋がり、多くの進歩を生み出したのだと。いわゆる省力化もずくの産物だろう。私たちの仕事もただ手足を動かしているだけで価値があり、働いていることにはならない。
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