京都には、琵琶湖の水量に匹敵するほどの地下水が湛えられている

 

京都にはこのように名水と呼ばれている井戸が他にもいくつもあります。人間が生きていくのに欠かせない水。水が豊富な土地でないと都市は栄えません。生きていくためだけではなく、ものの運搬や移動にも今以上に水路が欠かせませんでした。京都はこのような理由からも都にとても適した場所だったのです。

京都盆地から地下水が流れ出ていく場所は京都の南、天王山(大山崎町)と男山(八幡市)の間の1カ所だけです。この2つの山は実は豊富な地下水を京都盆地にとどめる天然のダムのような役割をしているのです。天王山はご存知天王山の戦いで有名な場所です。男山は石清水八幡宮が鎮座する山です。

さて、この地下水の出口・大山崎に早くから目をつけたのがサントリーです。日本初のウイスキーの蒸留所が1923年に建設されました。あの有名なウイスキー「山崎」はここで生まれたのです。今ではウイスキーの本場のスコットランド人が日本からのお土産で欲しがるぐらいの世界的なブランドです。

山崎は平安貴族なども離宮を営み、清らかなる水を歌に詠んだ場所です。そして、戦国の世に茶道を極めた千利休にとってもゆかりのある場所です。現存する唯一の利休作と伝わる茶室、国宝「待庵(たいあん)」がサントリー山崎蒸留所の近くにあるのです。

ちなみに待庵は国宝茶席三名席の一つです。他の二ヶ所は京都大徳寺龍光院の密庵京都建仁寺永源正伝院にあり、現在は愛知県犬山城下有楽苑にある如庵を言います。現存する茶道文化史上最高級の遺構で日本で最も貴重な茶室に指定されています。

たかが水の話と言え、京都をテーマにつなぎ合わせていくとこれだけ色々物語が出てくるのです。覚えた知識が1つの点として存在するのではなく線となり面になる。京都の魅力はまさにこのようなところだと思います。どんな切り口でも飽きさせない顔をいくつも持っているのです。

海から遠く離れ、山に囲まれた盆地の底に琵琶湖の水量に匹敵するほどの地下水が存在するとは驚きですよね。それでもなおかつ琵琶湖疏水によって琵琶湖から水を引くようになった理由や経緯はまたいつかお伝え致します。楽しみにしていて下さいね。

いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。

 
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【著者】 英学(はなぶさ がく) 【発行周期】 ほぼ週刊

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