シベリア鉄道の日本延伸は本当?「あれはプーチンの落語です」

 

例えば、山手線の原宿駅を建て替える計画が発表されて、ネット上で炎上しちゃったことがあったじゃないですか。「あんな素敵な駅舎を壊すなんて」っていうことで。でも、実際にあの駅で降りたことがあれば分かるんですけど、改札まで繋がってる跨線橋なんかはすごく古くて狭いしで、24時間いつでも大混雑じゃないですか。あそこにもし大きな地震が来たらどうなっちゃうんだっていう話ですよ。

JR東日本って超優良企業と思われてますけど、東北地方にある赤字ローカル線も抱えているから、決して財政的にラクじゃないんです。それでも「安全が第一」っていうことで、駅の建て替えを決めたら、それを叩かれちゃうわけで。そこは本当に可哀そうなところですよね。

他に大地震への備えといえば、お茶の水駅の辺りって神田川に土を盛って電車を走らせているじゃないですか。あれって実は明治時代に作られた古い土台で、震度7の地震が来たら崩れちゃうって言われてたんですよ。そこでJR東日本はどうしたかっていうと、土台にドリルで20mぐらいの穴を2つ、地中で交差するように開けて、そこにコンクリートミルクを注入して鉄骨を入れたんです。……普通だったら支柱を先に作っておいて、現場でカンカンカンと埋め込んでいくじゃないですか、基礎工事って。でも、あまり大きな騒音を立てる訳にいかないし、そもそも電車が走ってる横で工事をするスペースも無いので、そういう特殊な方法で補強したんですって。でも、そんなこと誰も知らないですよね。

私も一度、「こういうことを伝えるのも、鉄道会社の社会的な義務なのでは?」って尋ねたんです。すると先方は、東日本震災の際に大きなご迷惑をかけたので自慢話はしない方針だって言うんです。「電車に乗られて亡くなられた方はいらっしゃらないんですが、列車から避難された際に津波に遭われて、行方不明になった方が数名いらっしゃる」ってことで。もう聞くも涙、語るも涙の世界なんですが、とは言っても、そういうことは伝えないといけないということで、代わりに私が調べて書いているんです。

――そういう活動をされている方って、なかなかいらっしゃらないのでは?

冷泉:一般的に鉄道記者って、もちろん鉄道のことが大好きな人ばかりなんですが、鉄道会社が不祥事でも何でも起こしちゃうとすぐに叩いちゃうんですよね。読者の意見がそういうスタンスになりやすいってことで、迎合して叩かざるを得ないっていうことなんですけど。でも私は絶対に叩かない、少なくとも現場で努力されてる方はね。

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JR北海道なんかも、数年前にディーゼル特急の炎上事故を起こしたりして、かなり批判を受けましたけど、実情を知っていれば叩けないですよ。だって、北海道の気候の過酷さは、想像を絶しますからね。冬は零下20度まで下がる地点もあって、地表面はもちろん中の土も30㎝から40㎝は凍ってしまう。そのいっぽうで夏になると、温度が30度ぐらいまで上がるわけですから、そりゃレールはグネグネになるわけですよ。

それでも何とかやって来たのに、それをレールが5㎜とか7㎜ズレてるってことで非難されて、社長が二人も自殺しちゃうってことになったら、現場の人間としてはもうやってられないですよね。「そんな本州の基準で叩かれても……」って話なんですよ。

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