なぜ米国務長官は、同盟国でもない中国に「平身低頭」なのか?

 

ティラーソン氏の訪中を受け、ワシントンポストは「ティラーソンは北京に外交的勝利をもたらしたようだ」というタイトルの記事を掲載して、「一部の批評家はティラーソンは過度に頭を下げたと見る」と指摘したが、まさしくその通りであろう。トランプ政権は完全に北京に頭を下げてきたわけである。

問題は、政権成立の当時から南シナ海問題や貿易問題などで中国にあれほどの厳しい姿勢を示したトランプ政権が、北京に迎合する姿勢に転じたその理由は一体なんだったのかである。よく考えてみればその理由は一つしかない。キーワードは要するに「北朝鮮」である。

周知のように、北京訪問を含めたティラーソン国務長官の東アジア歴訪は、まさに北朝鮮問題対策のためである。

今年2月13日の金正恩政権による金正男暗殺の一件以来、特に3月6日、北朝鮮は在日米軍基地への攻撃訓練」と公言して日本近海にミサイルを4発も打ち込んで以来、北朝鮮問題、というよりも北朝鮮危機は一気にアメリカの最大の関心事となった。いよいよ暴走し始めた金正恩政権を前にして、北朝鮮からの核脅威はアメリカとそのアジアの同盟国にとっての、「今そこにある危機」となっているからである。

危機の発生を未然に防ぐため、その時点からトランプ政権は、「斬首作戦」などの軍事攻撃も選択肢として含めた、北朝鮮からの脅威を取り除くための根本的な解決策を本気で考え始めたようである。ティラーソン国務長官の東アジア訪問は、まさにこの「根本的な解決」のための地ならしと理解できよう。

例えば日本訪問中には、ティラーソン氏は岸田文雄外相との会談後の共同記者会見では、「北朝鮮を非核化しようとする20年間の努力は失敗に終わった。脅威がエスカレートしており、新たなアプローチが必要だ」と指摘した。そして安倍晋三首相との会談では、ティラーソン氏はトランプ政権が進める北朝鮮政策の見直しを巡り、「全ての選択肢がテーブルに載っている」と述べた。

ティラーソン氏がここでいう「新たなアプローチ」や「全ての選択肢」は当然、北朝鮮に対する軍事行動の実施を含めている。まさにそのために、米軍基地のある同盟国日本との合意と連携が必要となっており、ティラーソン氏訪日の最大の目的はここにあると断言できよう。もちろん、軍事行動を検討するなら、もう一つの同盟国であり、北朝鮮問題の当事者である韓国との連携も大事であるから、日本訪問の次にティラーソン氏が足を運んだのは韓国である。

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