中国は北朝鮮問題でアメリカとの協力姿勢を示した一方、トランプ政権が考える北朝鮮への軍事攻撃にはあくまでも大反対である。北朝鮮が米国の軍事攻撃によって滅ぼされ、そしてそれによって、中国が在韓米軍からの軍事的圧力に直接晒されることは、中国にとっての悪夢だからである。
だからこそ、中国の王毅外相がティラーソン米国務長官との前述の会談では、「朝鮮半島は危険なレベルに達している」との認識を米国と共有しておきながらも、「平和的解決には外交的手段が必要」と強調して、武力行使にはあくまでも反対する立場を示している。
しかし中国側のこの姿勢はいずれか、トランプ政権を苛立たさせることになりかねない。中国があくまでも軍事攻撃という選択肢に反対するなら、トランプ政権にしては、中国に頭を下げて迎合しなければならない理由は半減するのであろう。
しかももっとも肝心なことは、中国自身が決して、北朝鮮問題の根本的な解決を望んでいない点である。北朝鮮が常に「問題」となっているからこそ、アメリカは問題解決のためにいつも中国に頭を下げてくるのであり、問題が解決されてしまったら、中国のアメリカに対する優位はなくなってしまうからである。
つまり北朝鮮問題の根本的な解決を急ぐトランプ政権に対し、中国はあくまでもそれが「解決されない」方向へと持っていこうとするから、北朝鮮問題をめぐっての米中連携は最初から成り立たない。この中で、いずれかトランプ政権が、中国を頼りにして北朝鮮問題の解決は不可能であると悟った時、あるいは中国こそが北朝鮮問題解決の邪魔であるとわかった時、その時こそ、トランプ政権は再び、矛先を北京へと向けていくのであろう。
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