2台に1台。日本のスズキが大国インドで異常に愛される理由

 

「1部品につき、1円コストを下げよう」

スズキの低コスト化への取り組みは、鈴木自ら、年に一回、国内外の工場を丸一日かけて隅々まで自分で歩き、ムダがないか、目を光らせる「工場監査」に表れている。本社の役員と幹部は原則全員出席なので、100人以上が鈴木について、現場をぞろぞろ回る。「監査」と言いながら、役員や幹部に現場の苦労をわからせメーカーとしての原点を再確認するのも大きな目的の一つである。

社長や役員・幹部がぞろぞろ回るといっても、決められたコースを歩く大名行列ではない。気になる生産ラインでは、現場の監督者の説明を聞き、それでも納得できなければ、そこの従業員をつかまえて話をする。天井を見上げて、「あの蛍光灯は必要なのか」と聞いて、灯りが必要なら天窓を開けて、日の光を取り入れるようにする。電動のコンベアがあれば、重力式の滑り台が使えないか、考えさせる。太陽光や重力はタダである。

製造業は1円の利益が生死を分ける」と言う。これは決して誇張ではない。スズキの売上を仮に300万台で3兆円、利益900億円とする。クルマ1台あたりの売上は100万円で、利益は3万円でしかない。仮に1台あたり2万点の部品からなるとすると、1部品あたりの利益はわずか1円50銭に過ぎない。1円高くなれば、利益の2/3が吹っ飛ぶ。利益を少しでも多くする方法は、部品を1グラムでも軽くして原材料の使用量を減らすことだ。

スズキでは、こうしたことから「1部品につき、1グラム軽くしよう、1円コストを下げよう」という取り組みを行っている。これを単なる「ケチケチ」と考えるのは正しくない。ムダを少なくして価値ある商品を安く消費者に届けるのがメーカーの使命だからだ。

print
いま読まれてます

  • 2台に1台。日本のスズキが大国インドで異常に愛される理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け