そもそも中国では人をランク付けすることが昔から行われてきました。文革などはその典型例で、学校教師は「臭老九」(鼻つまみ者の第九階級)と呼ばれ、文人や儒者などもホームレスと同一視されて最低ランクの九階級に落とされたことがありました。
改革開放後には、農民が盲流として沿海都市に流れ着きましたが、市民から最低の階級として、九階級までしかないのに「十等」と呼ばれました。もちろん第一階級は役人です。
このように、中国人は人をランク付けすることが大好きなのですが、それは古代から行われていた官僚登用法、いわゆる「九品官人法」からくるものだと言われています。人民共和国建国後、毛沢東は「黒五類」(労働者階級に対する5種類の敵)と「紅五類」(革命幹部や労働者階級)に人民を色分けしました。
それはともかく、今後、Cランク人材の代わりに中国人が外国企業に入り込むということは、企業の機密漏えいのリスクが高まるということにも繋がります。中国政府としては、外国企業にスパイを送り込みやすくなるわけです。そしていざとなれば、そうした中国人に民事訴訟を起こさせて、外国企業の撤退を防ぎ、骨の髄までしゃぶりつくすということが可能になります。まるでアリジゴクの罠に落ちた獲物のようなものです。
このように中国進出のリスクは年々増大していますから、これから新たに中国進出を考える企業はそれほど多くはないでしょうが、悲惨なのはすでに進出している外国企業です。Cランク人材は国外追放となり、事業を継続するには現地中国人を雇うしかない。それで業績が悪化しても撤退するに撤退できず、有能な人材は中国に人質として取られ続ける……といった事態が増えるのではないでしょうか。
自由主義を主張する中国では、むしろ言論統制や統制経済によるチャイナリスクが増大しているというのが現実なのです。中国で痛い目にあってきた台湾も、大陸からの撤退が続いていますが、台湾人ビジネスマンの間では「地獄から生きて帰ってきたので、もう何も怖くない」という言葉が流行しています。
今週後半には、トランプ・習近平の米中首脳会談が行われますが、アメリカ第一主義を明確に掲げるトランプと、自由主義を掲げながら実際には中国第一主義・統制経済を強める習近平が、お互いに折り合わないのは目に見えています。
グローバリズムの恩恵によって急成長してきた中国が国内法で外貨の流出を阻止する動きこそが、グローバリズムや自由主義の終焉を意味しており、グローバリズムの歴史の申し子である中国に、「歴史の終わり」が近づいていることを示唆しているのです。