道路上の些細(ささい)なトラブルでそこまで正気を失うのは極端な例ではある。だが、中国全土の道路で、毎日のように「路怒症」が起きていることも事実だ。
昨年9月、中国公安部交通管理局が発表したデータによると、2015年1年間で全国の道路などで「路怒症」によって引き起こされた「違法事件」は1,733万件にも上ったという。単純に計算すれば同年に中国国民が「路怒症」で犯した違法事件は1日平均にして4万7,400件以上もあるということだ。
「路怒症」事件はなぜそれほど頻繁に起きるのか。車の多さによる道路の混雑も理由の一つではある。だが、最大の理由はやはり、今の中国で一般国民が抱える不平不満が高まり、車のドライバーたちがキレやすくなったことにあるだろう。実際、今年3月に開かれた全国人民代表大会(全人代)で、李克強首相は政府活動報告の中で「大衆が激しい不満を示している問題」の深刻さを自ら認めた。
「路怒症」事件の多発もこうした「激しい不満」の表れの一つであろうが、中国政府の心配はむしろ、大衆の不満が何らかの政治問題に向かって集中的に爆発してしまうことだ。
そうなったとき、あるいはそうなる前に、中国政府は何らかの対外紛争を起こし国民の目を外にそらすという「必殺の剣」を抜くこともあるから、「中国問題」にはなおさら注意が必要だ。
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