閉ざされし世界。誰も教えてくれぬ京都「花街」の知られざる素顔

 

舞妓としてお座敷に上がり数年経つといよいよ芸妓となります。年の頃で言うと20歳前後でしょうか。舞妓が芸妓になることを「襟替えりか」といいます。舞妓時代の赤襟が白襟に替わるからです。芸妓のお披露目の時、着物の襟が替わるので、この様に呼ばれています。置屋住いの舞妓の立場からこの日から自立するようになるので、「一本になる」といいます。

置屋の女将さんが少女をあずかり、仕込み、半だら、舞妓時代を面倒見るだけで家一軒ぐらいかかると言われています。彼女達は昼間は女紅場(にょこうば)という学校に通っています。舞や小唄、茶道や華道、和歌や俳句などといったありとあらゆる芸事やしきたり、教養を身につけるべく精進をしています。

さらに夜お座敷で身につける衣装は西陣織や京友禅など超一流品の高価なものばかりです。それも毎日同じものを身につけているわけにはいきません。季節に応じて、自然の移り変わりを感じさせるものや、お客さんのお気に召すものを選んで身につけます。お稽古の月謝から衣装までざっと思いつくだけでもとんでもない額のお金がかかっているのです。

その間彼女達はお小遣いだけもらって給料は出ないのもうなずける話です。まさに一本になるまでは預かって面倒を見てもらっている身なのです。逆に一本になって自分で稼げるようになっても、よほど稼げるようにならないと出費も多いので大変でしょう。

舞妓から芸妓になったことをはっきり示すのは、髪形です。舞妓時代の髪型は「割れしのぶ」や「おふく」というものです。数年経ち、襟替えが近づくと「やっこ島田」、更に「先笄さっこう)」を結う様に変っていきます。「先笄」は髪の上に「橋」と呼ばれるお相撲さんのようにマゲの付いた髪形で芸妓になる前の2週間ほどしか見られません。芸妓になる時は「先笄」の元結が切られ、舞妓を卒業します。舞妓時代は地毛で結った髪型が崩れないように高枕で寝ているようです。数日から1週間に一度鬢付け油でセットしてもらうそうです。芸妓さんになるとかつらになるようです。

さて、そんな彼女達とお座敷遊びをするにはどうしたらいいでしょうか? お茶屋さんは一見さんお断りなのでまずはすでにお茶屋通いをしている人が知り合いにいなければなりません。そしてその人に何度か連れて行ってもらって顔見知りになり「この人なら大丈夫だ」と信用されなければなりません。

お茶屋さんでの会計はツケ払いなので、後日女将さんが請求した時に連絡が取れないようでは困ります。もし、連絡が取れなかったり、支払い能力がなかったら代わりに紹介者が払うことにもなりかねません。このように花街は全てが信用による金銭のやりとりが古くから行われてきたのです。近年は京都の高級ホテルに頼むと紹介してくれるケースもあるとか。

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