「世の中のために緑を増やす使命を神様からいただいた」
それでも庭が出来上がるにつれ、人が集まり始めた。イギリスでは庭にたくさんの植物を使う。それを逆手にとって、極限まで少ない植物で『源』を表現した。白い砂が池の水面を表し、そこに2本の松が立っているというシンプルなデザインだ。「こんな庭は見たことがない」と多くの人が驚きの表情を浮かべた。
ショーの最終日、審査員から手渡されたのは、銀メダルにあたるシルバーギルト。初挑戦の日本人がシルバーギルトを受賞したことで、イギリスではいろいろなメディアが取り上げて、大騒ぎとなった。
しかし、日本の空港で待っていたのは、社員の出迎えの軽トラック1台のみ。それでも石原さんは世界で通用したという大きな自信をつけるとともに、「次も絶対出る、ゴールドメダルを必ずとる」と、借金を返しながら、また走り出した。
翌年からの挑戦で、3年連続金メダルという偉業を達成するのだが、それは本書を読んでのお楽しみとしよう。
庭を見て喜んでくれるお客さんたちの笑顔に、石原さんは「花と緑は人を幸せにする力がある」と信ずる。そして「自分は、世の中のために緑を増やす使命を神様からいただいた、ゴールドメダルはそのためのものだった、という気がする」と石原さんは言う。
文責:伊勢雅臣